2011 Fiscal Year Research-status Report
液膜研究分野の創生のための液体薄膜の粘弾性を直接測定する手法の開発
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23656058
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
美谷 周二朗 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (10334369)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 液体 / 薄膜 / 粘性 / 測定 |
Research Abstract |
本研究は、液体薄膜の物性を研究する分野を創生するためにその粘弾性を測定する装置、具体的には液膜の形状変形ではなく液膜の乗った基板の共振周波数の変化から粘弾性を測定する装置を開発することを目的としている。また、平成23年度の研究実施計画は、液体薄膜の粘弾性を薄膜状態のままで測定するための「共振型液体薄膜粘弾性測定装置」の構築、具体的には、金属やガラスなどの固体で大きさが数cm四方程度、厚み1mm程度の薄い基板上に試料液体を数10μmほど塗り広げ、基板の側面にピエゾ圧電振動子を固定し、基板振動の振幅や位相の変化から液膜の粘弾性を求める装置を構築し、様々な試料をもちいて基板として用いることのできる条件を明らかにするとともに、基板による液膜の粘弾性挙動の変化の検討を行う、というものであった。平成23年度に実施した研究は研究実施計画に基づき、振動するガラス基板上に付着した微小液滴の振動観察および超高粘性液体の表面物性を絶対評価するための手法の開発を行った。その結果、液滴振動観察からは基板上の液体振動モードが液体の表面張力、粘性、および基板との接触角によって決定され理論的見積もりと実験結果が一致することを明らかにした。また、超高粘性液体の表面物性評価に関しては、従来測定が困難であった水の100万倍の粘性を持つシリコンオイルにおいて表面張力と粘性を同時に1分程度で測定する手法の開発に成功した。これらの成果は、当初の研究計画を上回るものであり、次年度以降に本研究を遂行する上で重要な基礎事項であるばかりでなく、これまで困難であった超高粘性液体の基礎物性を研究することを可能にしたという点で学術的・産業的に大きな意義を持つものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では比較的大きな基板に塗布した液体膜の振動特性を解析することで、研究目的の一部を達成する予定であったが、すでに本年度で微小な液滴を用いた振動解析に成功しており、この結果を研究目的で対象とした広く塗布した液膜に適用することは容易であり、さらには液膜の広がり依存性までをも考慮した解析を可能としたことで液膜のサイズに関する研究をもすでに実現したといえる。また、研究目的で測定対象とした液体は非常に粘性の高いものであるが、対象液体の物性を別途測定する手法を開発したことにより、本研究で開発する液体薄膜粘性測定装置の評価を正しく行うことを可能とした。これらのことから、現在までの達成度は当初の計画以上であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究成果を踏まえ、今後の研究は当初の計画通りに液体薄膜の共振を3次元的に測定するシステムを構築し、粘性測定の精度向上を図るとともに共振周波数の違いから基板上に塗布した液体薄膜の質量を見積もる手法を開発する。これにより液体膜の乾燥による粘性変化などを正確に測定することが可能となる。さらに、構築したシステムを装置として完成させ、様々な液体に対して測定を行うことで装置の有用性を学術的・産業的にアピールしてゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の研究費は、本年度に行った液膜振動モードに関する研究において液膜を直接の測定対象とせずに既存のシステムを利用した微小液滴の振動特性解析を適用するという新たな知見により生じたものである。本研究の目的である液体薄膜粘性測定装置を構築する上では実際に液体薄膜の振動を観察する必要があるため、当該研究費は当初の計画の通り基板を共振させるための振動システムを構築する上で必要不可欠なものであり、システム構築に必要なピエゾドライバなどを購入するために使用する。これは翌年度以降に請求する研究費の使用目的である3次元共振測定システムの構築に必要なものではあるが重複するものではなく、当該研究費と翌年度以降に請求する研究費を合わせて使用することで本研究の目的を達成することが可能となる。
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