2011 Fiscal Year Research-status Report
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23656065
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
有吉 誠一郎 独立行政法人理化学研究所, テラヘルツイメージング研究チーム, 基幹研究所研究員 (20391849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田井野 徹 埼玉大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (40359592)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | センサー / エピタキシャル成長 / 超伝導デバイス / テラヘルツ光技術 / 電波天文学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「スペーステラヘルツ天文学」という新たな観測領域を切り拓くべく、超伝導トンネル接合(STJ)の新しい素子作製法を用いて究極感度の検出デバイス実現へ向けた技術的基礎を築くことにある。具体的には、2ヵ年の期間内に、従来の多結晶成膜法(スパッタ法)に代わり、単結晶成膜法(分子線エピタキシー法)を導入し、原子層レベルで平坦なトンネルバリア界面を形成することで超低雑音特性(=低い漏れ電流特性)をもつ素子作製技術の確立を目指している。1年目は単層膜の最適化を行った。具体的な研究項目は下記2点である。(1)Al膜とMgO膜それぞれの結晶成長条件の最適化まず、SiやAl2O3基板上でAl(導体)とMgO(絶縁体)薄膜それぞれの結晶成長条件の最適化を行った。その際、理研の分子線エピタキシー(MBE)装置を用いて成膜した。MBE装置は、従来のスパッタ装置よりも遥かに高真空で動作できるため不純物混入の少ない高純度の薄膜形成が可能である。そうして出来た薄膜の結晶性については、MBE装置内での原料ビーム強度や基板温度に対する依存性を反射高速電子線回折(RHEED)により"その場観察"を行った。また、膜の平坦性については、原子間力顕微鏡を用いて薄膜の凹凸形状を評価することで、原子層オーダーで平坦な界面を実現した。(2)Al単層膜の電気的特性評価次に、平坦かつ結晶性に優れたAl薄膜のサンプルについては0.3K冷凍機システムに設置・冷却し、超伝導転移温度(Tc)の測定を行った。一般にAl薄膜のTcはバルク状AlのTcに比べて低くなることが予想されるが、温度0.3K冷却により超伝導特性を確実に把握することが可能である。また、結晶中の不純物や格子欠陥量の指標となる残留抵抗比の測定を行うことで結晶性を多角的に評価しており、2年目に行う3層膜構造の本作製に備えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年目のMBE装置における成膜条件の最適化によってAlおよびMgO単層膜のエピタキシャル成長が可能になり、2年目に行う3層膜構造をもつ単結晶STJ素子実現の準備が整っている。さらに他の超伝導材料として、当初の研究計画には無かったNb単層膜のエピタキシャル成長も達成しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は平成24年度より名古屋工業大学へ転任したため、単結晶STJ素子作製に関しては距離的な制約から多少不便が発生することが予想される。しかし、代表者らは平成23年度すでに単結晶素子作製の見通しを立てており、また、今後も理研の客員研究員として継続在籍するため、埼玉大学との密接な共同研究、および効率的な出張によって単結晶素子開発を推進することが可能である。一方、本研究課題に関連する評価装置(0.3K冷凍機システム等)は代表者とともに名工大へ移設したため、今後の研究計画の推進に際して特に支障は無いと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2年目は単結晶STJ素子実現を目指す。具体的な研究項目は下記2点である。(1)全エピタキシャル3層膜【Al / MgO (or AlN) / Al】をもつSTJ素子の作製Al膜とMgO膜(or AlN膜)双方の最適成膜条件を用いて3層膜構造をもつSTJ素子の本作製を開始する。3層ベタ膜はMBE装置で成膜し、その後の加工は理研が所有する共同利用の超伝導素子作製専用プロセスライン(フォトリソグラフィー、現像装置、ドライエッチング装置)を用いて行う。(2)STJ素子の電気的・光学的特性評価3層全てが平坦かつ結晶性をもつSTJ素子の残留漏れ電流を測定し、超伝導素子に関する理論(BCS理論)と比較することで本提案手法の優位性を検証する。その後、テラヘルツ波検出器の試作と評価に取り組みたい。検出器試作については、異なるSTJ素子サイズをもつ検出器を1枚のフォトマスク上に並べて設計・配置して加工する。次に、STJ検出器の電気・光学特性を評価する。特に光学特性の評価については、名工大のテラヘルツ帯フーリエ変換分光器を用いる。広帯域の高圧水銀灯を光源とすることで、テラヘルツ帯を含む広帯域の周波数スペクトル測定とともに、異なる接合形状をもつ検出器間の相対感度測定が可能である。1画素の検出性能NEPにして10(-20) W/√Hz以下というテラヘルツ領域での1光子検出レベルの達成を目指す。なお、平成23年度の経費削減により生じた未使用額は、代表者の機関変更に伴う経費および共同研究のさらなる促進のために使用する予定である。
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Research Products
(11 results)