2011 Fiscal Year Research-status Report
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23656067
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
清水 良明 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10109085)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 最適化工学 / 多目的最適化 / 製品開発・設計支援システム / 価値システム / ことづくり |
Research Abstract |
意思決定において最適化は極めて重要な要素技術であるにも拘らず画一的に有効となる手法は存在しない。このため、様々な適用場面での実用化・機能化を図り、現実に使い勝手の良い最適化手法を与え、種々の応用を行ってきた(業績リスト:全て)。また所与の問題解決を適切に(多目的)最適化問題として定式化するための一般的手順を与えるために、必要となる知識工学やシステムズアプローチの要素技術を援用して最適化手法と有機的に連携させた最適化問題自体の定式化法を開発し、この有用性の検証も行った。さらに以下のテーマについても取り組みを始め、検討を進めている。1. 暗黙知を形式知に牽引する取り組み:我国のものづくりが将来にわたって競争力を維持、強化していくためには、研究開発や製造環境のイノベーションを進めながら製品の差別化を図っていくことが不可欠である。このためには、理性に基づく価格、機能性、信頼性といった数量的、論理的価値だけにとどまらず、理屈抜きで好き嫌いといった判断に基づく感性価値にも重きをおいた製品企画・開発および設計手順の確立が重要となる。こうした意思決定環境下において、感覚的な評価を含む多様な価値観に従う製品開発・設計支援システムの開発のための要素技術を与え、その実装化・性能評価を展開中である。2. 形式知を暗黙知に還元する取り組み: 数理的に得られた最適化結果をいかにわかり易く示し、その有用性を共有することは、現実の意思決定にとって極めて重要である。それにも拘らず、従来最適化分野の周辺領域については関心が払われてこなかった。特に多目的最適化においては、意思決定者の価値観と関わる選好情報の収集のため、最終結果だけでなく探索中においても途中結果をわかり易く提示することは重要であり、この視点を組み入れた多目的最適化手法を与え応用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
意思決定のスピード化とその合理化は競争力の必須条件であり、加えて我国においてもハードな有形の製品を生産する「ものづくり」から、無形の製品を生みだす「ソフトなものづくり」が主流となってきている状況がある。従来最適化に関わる研究は、最適化理論や最適化手法に関するものが中心であり、問題自身の定式化や結果の解釈や活用と関わるところにはほとんど関心が払われてこなかった。最適化を上述の状況の中で真に有効な意思決定支援のツールの一つとするためには、はじめに問題ありきではなく、問題の認識から始まり、価値システムの設定、問題の定式化、最適化結果の"みえる化"といった如き意思決定者との主観的な対応や関わりを不可欠とするアプローチが求められる。こうした一連の手順には、従来の数理的範ちゅうからはずれた悪定義・悪設定となる要素が多く含まれる。従って人との直接的な関与の深い発想・認識・情報共有のための手法との連携も必須となる。こうした最適化の周辺領域を含めた統合的問題解決手段を与えようとするところに、従来の数理工学的なアプローチとは全く異なる本研究の斬新なアイディアやチャレンジ性を有している。そして「ものづくり」の高度化に加えてサービスを含めた付加価値を高めることが新しいビジネスモデルとなることを認識し、この流れを一つの慣習として習得した場合、所与の問題解決において対象システムの特性に則した現実を柔軟かつ充分に反映させることが自然と行なわれ、活用が試みられるようになる。さらにこうした成果の蓄積が、「問題として定式化できれば、改善につながるにも拘らず、どうして定式化すればよいかわからず放置されたままにされ一向に改善されない問題が非常に多い」という生産現場での現状を打破できるようになる。これまで幾つかの要素技術の開発と応用を個別的に進めてきたが、全般的な最終目標の下での達成度は40%程度である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 最適化理論・手法の意味論的な体系化とその利活用現実には多数の種類の最適化問題が存在するにも拘らず、全てに共通して有効な解法は存在しない。従って一般のユーザにとって所与の問題に対してどのような解法が適切なのかの判断は容易ではない。また選定後においてもほとんどの解法において求解上のパラメータ調整なしに良い結果が得られない。こうした求解上の支援のための最適化オントロジーを作成し、所与の問題解決に対して定式化された最適化問題の適切性の検証や現実に採用すべき最適化手法の選択支援及び最適化パラメータの設定支援ができる手順を与える。2. 問題解決の定式化と求解支援手順の開発現実の問題解決を多目的最適化問題としてシステマティックに数理モデルとして定式化し、それをユーザが意味論的に理解するための一般的な方法論の展開を進める。このため、意思決定問題の定式化と定式化された問題の効果的求解につなげていくための要素技術、例えばIDEF0、マインドマップ(Mind Map)、TRIZ、KANO法、品質機能展開(QFD)などを有機的に関連させた手順を与える。そしてこれらを横断的に駆使しながら、これまでの成果に新たに各種オントロジーやマルチエージェント技術などの援用により、定式化から具体的求解支援までのプロセスの連携のための工夫を加えて「賢い決め方の鉄人を育む」手順の開発を進めていく。3. 最適化工学の体系化最適化を使える技術として育て、課題の深耕につながる方向性や論点の再構築を行う。これと伴に最適化を成功に導く上での姿勢、アプローチおよび実行支援・成果の共有に至るプロセスを総合的に捉えるためのフレームワークを構想し、最終的には次世代指向の意思決定支援のための最適化工学の体系化と事例研究を通じたその活用法を示す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当せず。
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Research Products
(12 results)