2012 Fiscal Year Research-status Report
非構造化メッシュ上のボロノイ格子差分による構造保存数値解法
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23656070
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
降籏 大介 大阪大学, サイバーメディアセンター, 准教授 (80242014)
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Keywords | 偏微分方程式 / 構造保存解法 / Voronoi 格子 / 局所保存則 / 大域保存則 / 離散変分導関数法 |
Research Abstract |
前年度に引き続き,Voronoi 格子上で成立する微積分則に相当する数学的性質についての調査および研究を行なった.また,対称性が無い状態での格子形状と微積分誤差等の関係について,Cea の補題に相当するl数学的な性質を記述する方法の模索も継続している.これに加え,構造保存解法である離散変分導関数法と Voronoi 差分を組み合わせることにも取り組んだ. まず,最初の項目としては Voronoi格子上の離散 Gauss--Green則の数学的性質の数学的な評価と定式化のために有限領域の Voronoi格子分割について特に境界補間の処理について調査検討を続け,特に高次近似の特徴の評価についてさらなる考察を加えた.これについては,理論的な可能性と実用性に隔たりがあり,さらなる今後の研究が必要であることが認識される.境界次元は1次元低いため,内部補間精度よりも境界補間精度を上げるというような用法であればこの考察はまだ比較的実用的である. また,Hodge 作用素の離散化との関連性についても研究を続けている.外微分形式による形式的離散化を進める方法と微分幾何学を離散化する方法との両立は困難であるため,これからの研究としては前者を中心にするべきと考えられる. また,微分方程式の数値解析や構造保存解法に対する研究交流のために専門家が集まる国際研究集会 ICCAM (International Congress on Computational and Applied Mathematics) や ICNAAM (International conference of numerical analysis and applied mathematcs) などに参加,講演発表し他専門家との討論を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では,計画二年目である平成24年度においては計画目標として前年度の研究の継続および計画書の第三の項目を挙げた.これらは,一つは Voronoi格子上での局所保存則と函数補間についてその性質と精度についての調査および数学的な評価である.次は Voronoi格子差分を用いての離散変分導関数法の実現について国際的な構造保存解法研究者に意見を求め,研究の進展を図るとともにこの研究の意義が奈辺にあるか広く確認をとることである.そして最後は,構造保存解法である離散変分導関数法とVoronoi 差分を組み合わせ,Cahn.Hilliard 方程式や非線形 Schrodinger 方程式などに代表される,数値的不安定性が強いとされる非線形方程式の数値求解が困難な問題に実用的な差分スキームを提供することである. 一つ目の目標については,前年度に続き Voronoi格子差分とその補間について調査を行い,離散化に伴う数学的問題としての有限領域の境界補間の処理について,高次差分の場合についてより深い結果を得ることが出来たことから,充分な達成を見たと認識している.二つ目の目標については,国際研究集会 ICCAM および ICNAAM においてミニシンポジウムを運営して講演を行い離散変分導関数法とその応用について広く議論を行うことができたことなどからこれも充分な達成を見たと認識しているものである.最後の目標についても,Cahn.Hilliard 方程式についての Voronoi格子での離散変分導関数スキームの計算を通じて具体的な数値解を得ることに成功していることなどから同様に十分に達成しているものと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は以下の計画を主に行う.まず,計画初年度および第二年度の調査と研究結果を離散変分導関数法の一般化という形で導入を試みる.離散変分導関数法についてはこれまでに広範囲な研究を行っているが,以前より指摘しているように自由格子上での差分法実装は未知の部分が広く,実装には多くの困難が存在する. これらを一つ一つ丁寧に解決し,数値的不安定性を強く持つとされる多くの偏微分方程式問題に対して離散変分導関数法による数値解法を提供するとともに数学的および数値的な性能評価を行い,数値計算を行う研究者に利益を与えることを目的とする.具体的には,これまでにも述べた,求解が困難な例の Cahn--Hilliard 方程式と保存系の例である非線型 Schr\"{o}dinger 方程式などを対象として研究結果を適用し,Voronoi格子上で大域散逸性$/$保存性を再現する差分スキームを構成,得られた差分解法の計算量および誤差の評価,および数値計算結果による数値評価を試みる.また,既存数値解法との比較を行い,離散変分導関数法による優位性を評価する. 次に,一部完成している離散関数解析の結果を用いての Voronoi格子差分による数値解法の理論的評価を試みる.離散関数解析はまだ体系付けられた学問ではないため適用には困難があるが,関数補間と弱形式を通じて関数解析を理論基盤にもつ有限要素法が数学的に豊かな応用をみせているように,Voronoi差分と離散変分導関数法も同様の数学的な結果を持てる可能性がある.困難ではあるがこの可能性も探求する.最後に,高次差分を低次差分で代替することで一種の高速計算が行える可能性が指摘されているので,これについても検討を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の推進方策に沿って以下のように研究費を振り分け,使用する計画とする.まず,非線形散逸型偏微分方程式の代表的な例としての Cahn--Hilliard 方程式と,同じく非線形保存型偏微分方程式の代表例としての非線形 Schr\"{o}dinger 方程式に対し,Voronoi格子差分を導入した離散変分導関数法に基づいて構造保存解法となっている数値スキームを構成し,そのスキームに基づいて適切な計算用 workstation 等の上でスキームの具体的な評価を行う.このために一定の計算能力を有する workstation の購入もしくは大型計算機の有償利用が必要になるため,そのために研究費用を主に物品費もしくはその他の枠として振り分ける. 次に,こうして得られる数値スキーム一般の理論評価を試みるが,この実現には特に有限要素法の専門家との共同研究が適切と考えられるため,このために必要な研究集会開催の費用や旅費等を計上する.また,平成25年には,主に解析学者および数値計算等における応用数学者の集まる国際研究集会 同様の国際研究集会 Equidiff13 (international conferences on differential equations) がチェコで, 微分方程式の数値解析の専門家が集まる国際研究集会 SciCADE(International Conference on SCIentific Computation And Differential Equations) がスペインで,同様の国際研究集会 Nonlinear Waves - Theory and Applications が北京で開催されるため,これらの国際研究集会に参加して講演発表を行い,平成23年度および24年度同様に多くの知見を得ることを目的として予算を振り分ける.
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Research Products
(5 results)