2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23656080
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
秋庭 義明 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00212431)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 放射光 / 電着薄膜 / 残留応力 / その場測定 |
Research Abstract |
ECD(Electrochemical Deposition)による薄膜形成過程において,膜厚変化にともなう結晶化度,結晶配向性,残留応力の変化を,放射光および実験室X線によるその場観察を実施することから,薄膜の形成機構を明らかにすることを目的とし,本年度は以下を明らかにしてきた.(1) 20ミクロンの厚さ,および8ミクロンの厚さの純銅の電着薄膜を用いて,10keVおよび30keVの放射光による回折プロファイルの確認を行い,8ミクロン程度の厚さでも,十分な回折強度が得られることより,その場測定が可能であることがわかった.ついで,放射光によるその場測定用の電着槽のプロトタイプを試作し,回折実験を実施した.測定材料には,やはり20ミクロン厚の銅薄膜を用いた.電着槽を通してのその場測定の可能性を確認した.放射光には,30keVのエネルギーのものを使用し,アクリルがある場合の回折放射光の強度を確認することによって,厚さ2mmのアクリル板を用いることによって十分な強度が得られることがわかった.(2) 最後にアクリル製の電着槽内に電着液を注入することによって,その場測定条件を検討した.電解液を注入することによって回折強度の強度は低下するとともに,バックグラウンドが高くなり,S/N比が低下することを確認するものの,アクリル板の厚さ2mm以下に,また放射光の経路長を20mm以下に抑えることによって測定可能となることを示した.(3)電着銅薄膜の繊維配向を確認するために,実験室X線を用いて評価した.このとき,電着薄膜とスパッタ薄膜を比較することによって,電着薄膜の特性を抽出した.(4) 複数の傾斜角度について測定可能な,結晶方位解析するためのソフトウェアを整備し,また,粗大化した配向膜についても測定可能となるように,ゴニオメータの複数の回転軸が制御可能なプログラムを整備した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射光施設の利用の制限のために,十分な回数の測定にはいたらないものの,銅薄膜からの回折強度に対する基礎的なデータの取得に成功しており,今後のその場測定システム構築のための基礎がほぼ確立された.また,電着槽の開発に必要な条件もおおよそ把握することができ,厚さ2mm以下のアクリル板を用いて,放射光の経路長を20mm以下にすれば,30keVの放射光で,その場測定が可能であることが把握できた.
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Strategy for Future Research Activity |
(1) H23年度に得られた基礎データをもとに,ゴニオメータテーブルに装着可能な電着槽の最終的な完成を目指す.電極基板に用いる材料には,オーステナイト系ステンレス鋼よりも銅の回折に重ならないフェライト系のSUS430を用い,放射光の経路長を20mm以下とすることによって回折強度を確保する.なお,電着液の攪拌には空気を用いるが,回折測定に影響のない程度の最適条件を決定する.(2) 放射光を用いて,成膜過程での銅薄膜のその場測定を実施する.このとき,最終的な膜特性(結晶配向性,結晶粒径および強度)が大きく異なる3条件程度を選定して実施する.(3) 上記で得られた,結晶化度,結晶配向性および残留応力の変化を総合して,薄膜形成機構について総合的に検討する.(4) 薄膜の実用的な特性評価技術として発展させるために,簡便に測定が可能な実験室X線による測定精度を明らかにする.実験室X線ではMoターゲットを用いて,40~50keVまでのエネルギー分散法で測定する.これにより,測定可能な膜厚の限界や,時間分解能について放射光と比較しながらその有効性を検討する.光学系には実績のあるソーラスリット系を用いるが,エネルギー分解能が不足して評価不可能な場合には,回折強度を犠牲にはするものの,放射光と同様のダブルスリット系を採用することによって対処する.(5) 以上の結果を取りまとめ,成果の発表を行う
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)設備備品費では,新たに高額な装置の購入はない.(2)消耗品費では,電着槽の作製に必要な消耗品や,電着に必要な物品費が必要となる.また,試験片用の材料費および加工費が必要である.各年度毎の実験を実施するうえで必要不可欠な数量である.また,放射光実験に関わる消耗品支払い料は定められた規定料金である.(3)旅費では,実施場所が遠方であるため,放射光実験打ち合わせおよび実験のため,放射光施設との往復(横浜-相生)が必要である.(4)印刷費では,論文の印刷費を計上した.
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Research Products
(1 results)