2011 Fiscal Year Research-status Report
ひずみ負荷による半導体デバイスの電気特性変動についてのナノメカニクス的検討
Project/Area Number |
23656083
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 徹 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40243894)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | nMOSFET / pMOSFET / シリコン / 応力 / 電気特性変動 |
Research Abstract |
これまでのnMOSFETの応力による電気特性変動のデバイスシミュレーションでは,応力による電子移動度の変化について,バンドにおける電子の存在確率,バンド間の電子の散乱確率,電子の有効質量の変化を考慮した.これにより,結晶軸に対してせん断応力が生じる場合についても,かなり精度の良いシミュレーションが行えた.しかし,このシミュレーション結果は,ライトドープシリコンの文献値にほぼ完全に一致するものの,nMOSFETの場合にはある程度の乖離が見られた. そこで,nMOSFET中の電子存在密度の大きな部分について,それぞれに応力を負荷し,そのときの電気特性変動がどのようになるかをデバイスシミュレーションによって調べた.その結果,電子存在密度の大きな部分は,ソース・ドレイン電極下とゲート直下のチャネル部分であることが判明した.応力による電気特性変動もほぼこの部分に応力が負荷されるかどうかに関わっていた.このなかで,チャネル領域の電子存在密度は,チャネルの表面近傍に偏在していることが確認された.この部分は反転層になっており,2次元量子化が発生していることが予測され,このことがnMOSFETとライトドープシリコンの違いを生み出していると予測された. さらにpMOSFETの4点曲げ試験片を作成し,これに負荷を与えながら電流特性変動を計測しようとしているが,計測器の不具合によってまだ実現していない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の最初にpMOSFETを搭載した4点曲げ試験片に負荷を行いながら電気特性変動を測定することを計画していた.しかし,計測器の不具合が解消できず有意な計測値が得られていない. 協力会社に依頼して,同pMOSFETの4点曲げ試験を行ったところ,問題無く電気特性変動を測定することができた.そこで,当研究室現有の装置の不具合についてもう一度精査を行い,大量の実験結果を取得できるようにしようと検討中である. この実験結果を基に,pMOSFETの正孔移動度の応力による特性変動モデルを構築する予定であるので,実験の実施を急ぐ必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,現有の4点曲げ試験によるMOSFETの電気特性変動測定装置の不具合を解消し, pMOSFETの応力による特性変動の実験結果を大量に取得する. これを元に文献調査等を行い,pMOSFETの正孔移動度の応力による特性変動を予測できるモデルの構築を行う.必要であれば,第一原理計算を行い,そのパラメータ等の決定を行う予定である. nMOSFETについては,電子のチャネル領域での2次元量子化の影響を調査し,その影響によって応力による電気特性変動がどのような影響を受けるかを検討する.これによって,実際のnMOSFETの応力による電気特性変動予測の精度の向上をはかる. 次に成膜によって生じる真応力の推定を行う.膜間の結晶格子定数の違いの他,分子動力学計算を行い,推定値をより確実なものにする予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず,4点曲げ試験装置の不具合を解消するために,計測系の問題のある部品を交換し,正常に計測が行えるように装置を改良する.このために必要な消耗品物品を購入する. さらに,デバイスシミュレーションを行うために,23年度に購入した計算機に必要なメモリやハードディスクなどの計算機用消耗品物品を購入する.また,デバイスシミュレーション,第一原理計算,分子動力学計算の結果を整理するためのソフトウエアを購入する. 最後に研究結果の発表および研究に必要な情報収集のための旅費を計上する.
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