2012 Fiscal Year Research-status Report
ひずみ負荷による半導体デバイスの電気特性変動についてのナノメカニクス的検討
Project/Area Number |
23656083
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
池田 徹 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (40243894)
|
Keywords | 応力 / トランジスタ / 電気特性変動 / nMOSFET / pMOSFET / シリコン / 移動度 / デバイスシミュレーション |
Research Abstract |
前年度までに,応力を受けるnMOSFETについて,デバイスシミュレーションによってその電流特性の変化を調べてきた.その中で,電子の存在確立の変化,電子の散乱確立の変化,電子の有効質量の変化を電子移動度の変化に考慮することによって,一軸,多軸引張の両方について,電流特性変化をかなり正確に表現できるようになっていた.しかし,これらの効果を考慮しても,バルクシリコンの移動度特性はよく表されているものの,nMOSFETについては実験結果から得られる移動度変化との乖離が残った. この応力によるnMOSFETの移動度の変化についての理論値と実験値の乖離について,真性キャリア濃度の変化と電子がnMOSFETのチャネル化の非常に薄い層に偏在することによる,二次元量子化の影響について検討を行った.二次元量子化の影響を調べるために,具体的には反転層における電子相対密度変化において表面量子化の効果を考慮した. その結果,ひずみによる真性キャリア濃度変化の電気特性変動に対する寄与は比較的小さいことが分かった.また,反転層における表面量子化を考慮した電子移動度モデルは,かえって解析結果を実験結果から乖離させた.そこで,基底サブバンドエネルギーを計算するためのパラメータを調整した結果,実験結果を定量的に再現するためには,反転層内の閉じ込め電界をより適切に与える必要があることが示唆された. 今後は,本シミュレーション手法のさらなる精度向上のため,表面量子化による無ひずみでの有効質量の変化について検討したい.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初,バルクシリコンの応力による移動度変化を,ほぼ精度よく推定することができるようになったことから,nMOSFETの移動度変化についても,nMOSFETに特有の真性キャリア濃度の変化やチャネル下の反転層における二次元量子化の影響を考慮することによって精度よく推定できるようになると考えた.少なくとも,これらを考慮することによって,実測値により近づくことが予想された. しかしながら,実際に計算を行なってみると,真性キャリア濃度の変化はほとんど移動度の変化に影響を与えないことがわかった.また,反転層における二次元量子化の影響を考慮するために,電子相対密度変化において表面量子化の効果を考慮したが,かえって実験結果から乖離する結果となった.
|
Strategy for Future Research Activity |
nMOSFETの応力による移動度変化がバルクシリコンの結果から乖離している原因が,チャネル下の反転層における二次元量子化の影響にあるであろうことは間違っていないと考えられる.しかしながら,現時点で見つけ出した二次元量子化を再現する物理モデルでは,その乖離を再現することができなかった. 今後は,さらに別の物理モデルを調査し,デバイスシミュレーションに組み込んで行くことを目指してゆきたい. また,本研究の目的の2番めが,pMOSFETについても同様のモデルが構築できるかどうかを調べることにある.そこで,まず,pMOSFETについて,4点曲げ試験を行いながら,その電流特性を測定し,デバイスシミュレーションによる再現を目指す予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,より有効な物理モデルを探索するために,電子実装における国際学会に出席し,これまでの成果を発表し,各国の研究者と討論を行なって,そのヒントを得たいと考えている.そのために,研究費を使って,電子実装における国際会議InterPACK2013に参加したいと計画している. 当該年度において,次年度使用額が生じた原因は,pMOSFETの電気特性変動を計測する予定であったが,当該年度末から次年度はじめにかけて,京都大学吉田キャンパスから桂キャンパスへの移転とさらに研究代表者である池田の鹿児島大学への異動に伴う実験装置の移転が発生したために,実験が行えなず,実験用消耗品の購入が遅れたためである. 次年度においては,pMOSFETの応力による電気特性変動を計測するための当該年度の未使用額と合わせて,実験用消耗品の購入を行う計画である.
|
Research Products
(7 results)