2011 Fiscal Year Research-status Report
多孔質多層構造生体材料の開発と軟骨・骨多層組織再生に関する基礎的研究
Project/Area Number |
23656090
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
東藤 貢 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (80274538)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 再生医療 / 組織工学 / 関節組織 / 生体材料 / 生体力学 |
Research Abstract |
末期の変形性関節症や悪性腫瘍や骨頭壊死のような大規模な関節部の損傷に対する再生医療では,軟骨と骨からなる層状の組織再生が必要不可欠となる.そこで本研究では,大規模損傷を伴う関節の完全な再生医療を実現させるための基礎的研究として,軟骨と骨から構成される多層系生体組織の再生医療用足場材料を開発し,骨髄由来間葉系幹細胞を播種後軟骨細胞と骨芽細胞へそれぞれ分化させることで,自然な生体組織に匹敵する力学特性を有すると共に,生体適合性に優れる軟骨・骨多層構造再生組織を創製することを目的としている. 平成23年度の研究としては,軟骨-骨の2層構造を力学的に模擬した2層構造の生体吸収性多孔質材料の作製を試みた.軟骨層としては,延性ポリマーであるPCL,骨層としては,より弾性率の高いPLLAとリン酸カルシウム系セラミックスであるハイドロキシアパタイトHApの複合材料を用いた.骨層については,さらにPLLAの円筒形強化構造を導入し,剛性の向上を試みた.豚の膝と股関節から軟骨-骨の多層組織を採取し圧縮実験を行い,開発した2層材料の圧縮特性と比較したところ,良い一致を示した. 幹細胞を用いた骨単体の組織再生研究として,I型コラーゲンとβ-TCPを複合化し多孔質化した材料を作製し,ラット間葉系幹細胞を播種し増殖・分化・細胞外マトリックス形成挙動等を調べたところ,コラーゲンとβ-TCPを複合化することで幹細胞が活性化され骨形成能が大幅に向上することが明らかになった. また,骨組織再生用材料として,HApやβ-TCPの多孔質焼結体を作製し,PCL,PLLA,コラーゲン等のポリマーをコーティングする新規材料の開発研究を試みた.その結果,ポリマーコーティングにより構造安定性がもたらされ力学特性が向上することが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目的は,軟骨と海綿骨の2層構造で形成される再生組織をin vitroで作製することであるが,平成23年度には,実際の生体組織と同等の力学特性を有する2層構造生体吸収性材料の開発に成功し,本材料の足場材料としての有効性が期待される.また,骨組織のみについて,有機・無機複合系足場材料と間葉系幹細胞を用いて組織再生実験を試みたところ,幹細胞が骨芽細胞へと分化し,I型コラーゲンの生成とそれに続く石灰化が効果的に生じ,骨様組織の再生に成功した.現在,軟骨組織の再生に取り組んでおり,平成24年度中には,軟骨-骨の2層構造の再生組織が実現できる予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究の推進方策は以下の通りである. (1)軟骨組織再生研究として,足場材料として,II型コラーゲンのゲルあるいは多孔体を用いる.また,軟骨の主要成分の一つであるプロテオグリカンを添加し,細胞としては,骨髄由来間葉系幹細胞および脂肪由来間葉系幹細胞を用いて培養実験進め,軟骨細胞への分化状況や軟骨組織再生状況について生物学的評価と力学的評価を行う.生物学的評価としては,細胞数の計測と軟骨に関連するタンパク質DNAの定量化等を行う.(2)骨組織再生研究としては,平成23年度の成果を踏まえて,I型コラーゲン,リン酸カルシウム系セラミックス,生分解性ポリマー等を複合化した,より高機能の足場材料の作製,間葉系幹細胞の播種による組織再生研究を進める.生物学的評価として,細胞数の計測とALP活性の評価,ならびに骨に関連するタンパク質DNAの定量化等を行う.(3)多層構造組織再生の研究としては,単独に再生した軟骨と骨組織を層状に積み重ね,さらに培養を進めることで,界面において石灰化軟骨を形成させ,より実際の関節組織に近い再生組織を形成させることを試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費使用計画は以下の通りである.(1)幹細胞,培地,分化誘導剤等の細胞培養関係消耗品(2)細胞数,ALP活性,各種タンパク質DNA量計測のための消耗品(3)足場材料作製のための原料(コラーゲン,リン酸カルシウム,プロテオグリカン,骨形成誘導因子等)購入と試料作製に必要な各種消耗品(4)顕微鏡観察用消耗品,特に共焦点レーザ顕微鏡を用いる場合の蛍光薬品等(5)研究成果発表のための国内外学会参加のための旅費および参加登録費
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