2011 Fiscal Year Research-status Report
自己き裂治癒コーティング法の開発と耐熱超合金への適用
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23656091
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
内田 仁 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (30047633)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 薄膜 / き裂 / 自己治癒 / 高温 / 積層 |
Research Abstract |
自己き裂治癒能力を有するセラミックスコーティング法の確立を目的として,当該粘度においてはその成膜条件に関する基礎検討を実施した. 成膜にはイオンビーム支援蒸着装置を用い,自己き裂治癒能力を有するバルクのセラミックスに関する報告をもとにSiNとSiCをナノメートルオーダで交互に積層した薄膜を成膜した.SiNはSiを電子ビーム蒸発させながら,窒素イオンビームを照射することにより得た.一方,SiCは,エチレンガス雰囲気下においてSiを電子ビーム蒸発させながらアルゴンイオンビームを照射することにより成膜した.イオンビーム支援蒸着においては,蒸発速度やイオンの加速電圧,照射量などを独立制御可能であり,最初にSiNおよびSiC単層の成膜条件について検討した.その結果,特にSiC層に酸素が多く混入しやすく,最適な条件においても,SiCとSiO2がほぼ1:1で含まれていた.自己き裂治癒においてはSiCの熱化学反応が重要であり,SiC含有量の増加が課題である. つづいて,SiN/SiC積層薄膜における自己き裂治癒能力と積層構造の関係について検討した.ビッカース圧子の押し込みにより薄膜に予き裂を導入し,電気炉で1200℃で加熱し,適宜取り出して走査型電子顕微鏡によりき裂を観察した.また,積層構造として,全膜厚を1μmに固定し,層数を4,8,12と変化させた.いずれの積層構造においても,き裂先端から治癒と考えられる酸化物の生成が確認された.しかしながら,層数が多くなるにつれて治癒の開始時間は早くなり,治癒き裂長さは長くなる傾向にあり,自己き裂治癒能力は積層構造に依存することが示唆された.また,治癒材の強度を曲げ試験により評価したが,治癒していないき裂材とほとんど強度は変わらなかった.この要因として,導入したき裂の長さに比べて治癒したき裂長さが短いためと考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画においては,当該年度で自己き裂治癒薄膜を作製し,治癒後の強度を行うことでき裂の回復状態を定量的に評価する予定であった.しかしながら,成膜条件を変えた自己き裂治癒薄膜を作製することはできたが,その強度評価まで到達しなかった.現状では,治癒可能なき裂長さは非常に短く,き裂材と治癒材の強度にほとんど差が現れなかったためである.現在,き裂材全体に応力を負荷し,強度を評価するのではなく,インデンテーション法により治癒したき裂近傍に局所的応力場を発生させることで治癒状態を評価する方法を検討している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究においては,SiNとSiCの積層薄膜により自己き裂治癒能力の発現を期待しているが,現在の成膜条件においては,薄膜中に酸素が多く含まれており,SiCが十分に生成されていない.まずは,成膜条件について見直し,SiCの含有量が多くなる成膜条件について検討する. その後,自己き裂治癒コーティングを施したNi基超合金に対してクリープ試験を実施し,自己き裂治癒コーティングが高温強度特性に及ぼす影響およびその破壊メカニズムを明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度購入した赤外線導入加熱装置が当初想定していたよりも安く購入でき,また,その他の消耗品や試験片作成費など当初予定通りに執行できたことで,次年度への繰越金が生じた. 次年度は成膜における消耗品(高純度プロセスガスやイオン源フィラメント,るつぼ)などを中心に購入予定である.また,今年度得られた成果をもとに国際会議での発表を予定しており,その旅費に一部使用する.
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Research Products
(2 results)