2011 Fiscal Year Research-status Report
イメージベース有限要素法による褥瘡発生のバイオメカニズム的病因の解明
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23656092
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高野 直樹 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (10206782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永竿 智久 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20245541)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 有限要素法 / イメージベースモデリング / 生体力学 / 界面切欠き / マルチスケール法 / 褥瘡 / 看護・介護 / 皮膚特性 |
Research Abstract |
[1] 「皮膚変形特性計測装置の開発、およびデータ計測」 生体の前腕部ならびに献体皮膚および皮下組織に対して圧迫とずれ変形を同時に負荷できる装置を自作し、成年男子20名に対するデータ計測を行った。ばらつきを有するデータは、混合ワイブル分布にて近似し、次年度以降の不確かさを考慮したシミュレーションにも利用できるよう整理した。[2] 「骨-筋肉界面ひずみ評価用イメージベースモデラーの開発」 市販ソフトウェアSimpleWareを用いることにより、臀部CT画像に基づき、3次元モデルの再構築から四面体要素による有限要素データの作成までの一連のモデリングが比較的容易に行える手順を開発した。試計算の結果、次年度の研究項目として、要素分割の質の向上、[3]で開発した手法に適したモデラー開発の2点に整理するに至った。[3] 「界面の繊維を考慮したマルチスケール解析」 褥瘡発生に至るバイオメカニズムとして、骨-筋肉界面の繊維組織の破断に着目し、これをマクロな切欠きモデルとして扱い、切欠き端部のひずみを正確に求め、健常者モデルを参照値として危険性を判断するアルゴリズムを確定した。骨切りと他部位の筋肉組織を移植するsurgical flapを模した解析から、術後の褥瘡再発の危険性を看護時の荷重方向との相関で調査した。[4] 「不確かさのモデリング・解析手法の開発」 前項目の切欠きの部位と長さにばらつきを与えつつ、モデリングの手間を軽減するための確率重合メッシュ法のアルゴリズムを考案し、その計算コスト(計算量)を理論的に見積もった。その結果、通常の重合メッシュ法に比べ、計算時間の短縮につながるとの結果を得たため、プログラミングを開始した。[5] 「看護・介護時の体位変換方法の調査」 関連の著書と介護用枕を購入し、予備実験を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画にあげた5項目とも予定通りの成果を得るとともに、次年度に実施すべき研究項目を整理することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り、骨-筋肉界面の繊維組織の破断に着目した新たな褥瘡のバイオメカニズムに基づき、有限要素法により褥瘡発生の危険性を判断するために、切欠きを導入した有限要素モデルを用いた解析アルゴリズムを確立したため、ばらつきを考慮した2次元確率重合メッシュ法の導入により完成させることを第一目的とする。また、SimpleWareソフトウェアを軸とした3次元モデリング・シミュレーションの確立を目指す。同時に、介護・看護時に体位変換のために患者に加えられる荷重を定量的に計測する手法の開発と計測を第二目的とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が発生した理由は、皮膚特性試験機に必要と考えた部品が自作で加工製作できたためであり、一方、次年度に予定している介護・看護時の荷重計測デバイスは予定額では測定精度が不足するとわかったためである。したがって次年度の物品費としては、介護・看護時の荷重計測デバイスが主たる支出項目である。画像処理・モデリングの一部に利用する市販ソフトウェアライセンスは、大学の経理規程に従い、その他経費として支出する。初年度の研究成果を国内外の学会講演会にて発表するに至ったため、旅費を計上する。特に国際会議ESB2012(European Society of Biomechanics、リスボン、2012年7月)に採択された。また、成果はJournal of Computational Science and Technologyに投稿中であり、採択されれば論文投稿費を支出する計画である。研究分担者への配分額は35万円とした。
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