2011 Fiscal Year Research-status Report
人工軟骨使用を目標とする新規積層型ポリビニルアルコールハイドロゲルシートの作成
Project/Area Number |
23656119
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
岩井 智昭 金沢大学, 機械工学系, 講師 (30242530)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | ポリビニルアルコールハイドロゲル / リン酸三カルシウム / 積層化 / 摩擦係数 |
Research Abstract |
全体を主に3つの課題に分け実施した。それぞれは、ポリビニルアルコールハイドロゲル(PVA-H)作成時の反復凍結回数と摩擦係数の関係、PVA-Hにリン酸三カルシウム(α-TCP)を補強材として混合し、摩擦特性に及ぼす影響の測定、および無充てんPVA-Hとα-TCP充てんPVA-Hの積層化材の制作と摩擦特性の測定である。 PVA-Hは反復凍結回数により機弾性率が大きくなった。このとき、摩擦係数は反復凍結回数の増加により一様に減少した。 PVA-Hにα-TCPを補強材として混合した材料の作成では、140℃で溶融中のPVA溶液に乳鉢にて粉砕し粒子径を数ミクロンとしたα-TCP粒子を混合した。得られたα-TCP混合PVA-Hの破断面を光学顕微鏡で観察したところ、PVA-Hとα-TCP粒子の界面に顕著な剥離は観察されなかった。また、α-TCP混合PVA-Hの弾性率は無充てんPVA-Hとほぼ同じであり、α-TCP混合による機械的強度の向上は得られなかった。ただし、硬質な微粒子を混合しても弾性率が低下しないことから、α-TCP粒子とPVA-H間に何らかの凝着力が作用していることが推測される。このとき、摩擦係数は無充てんPVA-Hより高い値を示した。これは、充てんα-TCPが摩擦界面においてアブレシブ性を示しているためであると考えられる。 無充てんのPVA-Hとα-TCP充てんPVA-Hの積層化材の制作を行った。本年度は基礎的技術確立のため、厚さ2mmの無充てんのPVA-H層の下に厚さ1mmのα-TCP充てんPVA-H層の積層化を行い、十分な界面での接着強度を持つ積層化材を作成できた。断面の観察より無充てんのPVA-Hとα-TCP充てんPVA-Hが積層化されていることが確認できた。その摩擦係数の測定を行った結果、無充てんPVA-Hとα-TCP充てんPVA-Hの中間の値を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主たる目標は、ポリビニルアルコールハイドロゲル(PVA-H)へのリン酸三カルシウム(α-TCP)の分散と接着性向上の実現、および無充てんPVA-Hとα-TCP分散PVA-Hの積層化の実現であった。 PVA-Hに乳鉢にて粉砕したα-TCPを分散させた、α-TCP充てんPVA-Hの作成は実現できた。また、α-TCP充てん材での機械的特性、特に引張での弾性率が低下しなかったことより、α-TCP粒子とPVA-Hとの接着性があることが示唆された。また、無充てんのPVA-Hとα-TCP充てんPVA-Hの積層化材の作成にも成功した。このときの摩擦係数の測定により、無充てんPVA-Hおよび積層化材の摩擦特性を明らかにした。よって本年度の主たる目標は達成されたと評価する。 一方、α-TCP充てんによる弾性率の向上が得られなかったこと、および摩擦係数の測定より、本実験で使用した粒子径でのα-TCPはアブレシブ性を持つことが示唆されたことより、本実験で使用したα-TCPの粒子径が問題であること明らかになった。さらには、各種材料の摩耗特性の測定が明らかにされていなく、今後の課題である。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、α-TCP充てん材と無充てん材の積層化による効果をより高めることを目標とする。具体的には、α-TCP充てんPVA-Hの一層の機械的特性向上を図る。そのために、充てんα-TCPの粒子径をさらに微小化することを目指す。一般的に各種材料に粒子を混合し補強効果を得るためには、数十nm程度以下の粒子径が必要であることが予想される。よって、自動乳鉢によって機械的手法、及びその他の手法を検討し微粒子化を目指す。また、本研究において、層間の結合が下層(α-TCP充てんPVA)凍結のどの段階でもっとも強固になるかを明らかにするために、凍結における積層化時間とはく離強度の関係を材料試験機による剥離試験から求める。α-TCP充てんPVA-Hの機械的特性の向上が実現したならば、上層の無充てんPVA-Hによる低摩擦効果と下層のα-TCP充てんPVA-Hの荷重支持効果を相乗させ、かつ層間の接着強度を考え、積層化数の多層化を図る。また、摩擦試験において、より生体関節でのしゅう動状態に近い揺動型の摩擦試験機を作成し、PHA-Hおよびα-TCP充てんPVA-Hの摩擦特性を明らかにする。一方、耐久性の観点から摩耗量の測定が必要であるので、摩擦面の観察や光学的手法により、PVA-Hの摩耗の評価も行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度はの主な設備に関しては、α-TCP充てん材をより微粒子に粉砕するために、自動式の乳鉢を導入し機械的にα-TCP微粒子を作成することを目指す。また、PVA-Hを凍結する冷凍庫内にXZ精密型自動ステージを設置し、凍結における積層化時間とはく離強度の関係を求める。このとき、均一な層の形成も合せて目指す。さらには、より生体関節でのしゅう動状態に近い揺動型の摩擦試験機を作成し、傾斜角センサーを用いた摩擦係数測定システムを導入し、PHA-Hおよびα-TCP充てんPVA-Hの摩擦特性を明らかにする。また、研究成果を積極的に国際会議で発表するとともに、学術雑誌等に投稿する。
|