2011 Fiscal Year Research-status Report
ミクロな混相流動場の可視化と制御によるソノポレーション最適条件の究明
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23656124
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
冨田 幸雄 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (00006199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 俊彦 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50431383)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | マイクロバブル / キャビテーション / ソノポレーション / 超音波 / 分子導入 / マイクロジェット / 衝撃波 / 気泡 |
Research Abstract |
本年度はソノポレーション効果に及ぼす諸効果の解明を目指して超音波とカプセル型のマイクロバブルの干渉実験を行い、バブルの破壊に及ぼす超音波の音響特性や気液二相流のボイド率の影響を調べた。すなわち、マイクロバブルとして連携研究者(東北大学・医工学研究科・教授・小玉哲也・細胞実験)から提供された超音波造影剤ソナゾイドを使用し、蒸留水で希釈した各種濃度のソナゾイド懸濁液を、組織を模擬した寒天上部に注入して1MHzの集束超音波との干渉実験を行った。ソナゾイドの平均直径は 2 ~3 ミクロンと小さく、その挙動を捉えるためには拡大撮影が必須である。顕微鏡レンズを搭載した数種類の高倍率撮影システム(高速度カメラ撮影および瞬間撮影法)を構築し、撮影システム毎に被写界深度を把握した上でソナゾイドの存在を直接確認して、超音波照射によるソナゾイドの破壊過程をその場観察するとともに、超音波照射後のソナゾイド懸濁液の顕微鏡観察からソナゾイド残存個数を測定して両者の結果を比較した。その結果、超音波の作用を受けるソナゾイドマイクロバブル群は、その一部が破壊されるとともに放射圧で駆動された音響流と同調して一定速度で上昇しながら視野から消えて行く過程が明らかとなった。更に隣接する二個の気泡が合体するため超音波照射から10ms乃至20ms経過後にソナゾイド残存数は急減したが、顕微鏡観察からは一定の減少率で破壊が進んでいることが推測できた。キャビテーション気泡は超音波照射30ms以降に活発に現れた。上壁として別の寒天壁を挿入してその近傍でのソナゾイドと気泡の挙動を高速度カメラで詳細に観察した。以上の成果は第8回キャビテーションに関する国際シンポジウムで発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究目的はソノポレーションのメカニズム解明につながるデータを集積することであった。一定の温度状態(25℃)にあるソナゾイド・マイクロバブル懸濁液と周波数1MHzの超音波との干渉実験を行い、ソナゾイドの破壊特性とその後現れる気泡の挙動観察を高速度デジタルビデオカメラ撮影(直接経費の「その他」項目で実施)並びに高倍率の瞬間撮影で明かにするとともに顕微鏡観察による残存個数測定との比較検討を行った。その結果、ソナゾイドマイクロバブルの破壊に及ぼす超音波の諸条件(強さ、干渉時間、デューティ比)やソナゾイド懸濁液の濃度の影響について当初の計画どおり実験を進め、ソナゾイドが超音波照射から10ms~20ms後に急激に減少することを明らかにした。顕微鏡観察による残存個数の比較から、超音波の放射圧による破壊と音響放射流による上昇移動のため視野から消失したものと推測できる。これらの成果の一部を雑誌論文および学会発表の形で公表した。また寒天表面に形成される表面粗さを原子間力顕微鏡(AFM)で測定し超音波照射により寒天壁面上にナノスケールの変形が生じることを確認したが、各実験条件に対応した信頼性のあるデータとするためには、より再現性の良い状況設定の下で統計的なデータ処理に基づいた評価を行う必要がある。一方、生体内部への応用を考えて、異なる音響インピーダンスの寒天ブロックで作製された上・下の壁で挟まれた狭い隙間に懸濁液を注入し、超音波との干渉実験を行った。異なる物質を透過・反射する超音波の集束効果による温度上昇を水中に設置したアクリルによって確認した。今後は異なる音響インピーダンスの寒天ブロックを加工して局所的な温度上昇を実現する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
主に組織を透過する超音波とソナゾイド懸濁液との干渉効果を調べるため、平成23年度は組織を模擬した寒天を超音波入力側に設置し、上方から導入する寒天との間隙は比較的大きく取った。平成24年度は、上・下の寒天壁の間隙を変化させてより現実に近い状態で干渉実験を行い、ソナゾイドの破壊特性とその後に発生する気泡の運動を観察する予定である。当初、高速度カメラ撮影の外部依頼は平成23年度に1度行う予定でいたが、データを分析した結果、更に現実的な状況下で現象観察を行う必要が明らかとなった。そのため平成23年度の研究経費の一部を残し、平成24年度に2回目の高速度カメラ撮影を行うこととした。その実施時期として、2012年8月にシンガポールで実施される第8回キャビテーションに関する国際シンポジウムでの発表論文の提出締切日(5月1日)を配慮して、平成24年4月中旬に実施する予定である。 一方、干渉を受けた寒天壁の表面に形成されるピット痕を原子間力顕微鏡(AFM)で観察してきた。その結果、超音波照射前・後では表面粗さに明確な差異が認められた。しかし原子間力顕微鏡で再現性の良いデータを得るためには小さな試片に充填するゲル(寒天)の作製に細心の注意を払わなければならず、試片作製にはなお幾つかの課題が残されている。研究分担者に配分される平成23年度および平成24年度の金額を合わせて使用し、試片作製を集中的に行うとともに統計的な処理も含めて検討を進める予定である。更に、キャビテーション気泡が発する衝撃圧が水温 40 ℃ 付近で最大となる知見を踏まえてソノポレーションの温度効果を明らかにする。以上の実験研究からソナゾイドの破壊が促進され、衝撃圧が最も増大する諸条件(超音波発振条件、マイクロバブル懸濁液濃度、ターゲットの種類)を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度は、主に組織を模擬した寒天ブロックを透過する超音波とソナゾイド懸濁液との干渉効果を調べ、ソナゾイドの破壊数(あるいは残存数)に及ぼす諸因子の影響を究明した。平成24年度は、寒天壁近傍および上・下の寒天壁に挟まれるソナゾイド懸濁液と超音波の干渉実験を行い、ソナゾイドの破壊と気泡の挙動を究明する。平成24年度の4月中旬に、2012年8月にシンガポールで開催される第8回キャビテーションに関する国際シンポジウムで発表する論文に関する実験を行うため、平成23年度の研究経費の一部を残しておき、これを平成24年度の4月に、第2回目の高速度デジタルビデオカメラ撮影の外部依頼経費(前年度の直接経費の「その他」項目)として充てる予定である。 一方、ソナゾイド懸濁液と接触する寒天壁面の表面測定に関しては、研究分担者が試片作製の試行を重ねてきた。その結果、原子間力顕微鏡で再現性の良いデータを得るためには小さな試片に充填するゲル(寒天)の作製に細心の注意を払わなければならないことが判明した。そのため平成24年度は標準試片作りのために配分額を集中的に使用する予定である。旅費は国内(第19回非線形波動に関する国際シンポジウム、機械学会2012年次年会、第16回キャビテーションシンポジウム)および外国(シンガポールでの第8回キャビテーションに関する国際シンポジウム)での成果発表のためのものであり、謝金は高速度カメラ撮影の際の実験補助(研究協力者:大学院生)の費用である。
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Research Products
(5 results)