2011 Fiscal Year Research-status Report
走査型ステレオPIVとLIFによる速度三成分と反応物濃度のボリューム計測法の開発
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23656133
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長田 孝二 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50274501)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 流体工学 / 乱流 / 物質拡散 / 化学反応 / レーザ計測 |
Research Abstract |
本研究の目的は,走査型時系列ステレオPIVシステムに反応場にも適用可能な走査型レーザ誘起蛍光法(LIF)を組み合わせることにより,三次元空間内での速度三成分と反応物質濃度を同時計測する技術の開発である.初年度である今年度は以下の研究を行った.(1) 構築したシステムで計測された速度および濃度場に関するデータの妥当性を検討するため,反応乱流場の基礎データを取得した.実験にはX型熱膜流速計と光ファイバ濃度プローブを組み合わせた複合プローブを用い,噴流拡散場で速度および三成分濃度の瞬間同時計測を行った.得られた瞬時データから種々の速度-濃度結合統計量を評価した.(2) ガルバノスキャナを用いた走査型時系列ステレオPIVと走査型LIFシステムの基本設計を行った.ガルバノスキャナ本体の納期が発注後4ヶ月ということで今年度予算での購入には間に合わなかったが,次年度にガルバノスキャナを購入次第実験にとりかかることが可能な状態とした.(3) 格子乱流を用いた反応乱流水路の設計を行った.当初計画通り,テストセクション下部の乱流格子に設置されたマルチノズルからヘッドタンクを用いて拡散物質(ウラニン水溶液または反応物質A)を噴出させ,同時に,別のヘッドタンクを用いて周囲から水道水(あるいは反応物質B)を供給する仕様とした.この水路については次年度に製作予定である.(4) 実験結果の妥当性を数値計算により検討するため,反応乱流場の三次元直接数値計算を行った.運動方程式であるナビエ・ストークス式と化学反応項を含む物質の拡散方程式を連立させて解くことにより,反応乱流場における速度場と濃度場の情報を得た.計算機の性能上,スーパコンピュータを用いたとしても実験で対象としている高シュミット数に対する計算は実行不可能であるが,乱流場および基本的な濃度場の情報を数値計算より得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は計測対象となる縦型の拡散水槽を設計・製作およびガルバノスキャナを用いた走査型時系列ステレオPIVと走査型LIFによる速度・反応物質濃度の三次元計測システムの開発であった.これに対して,拡散水路の設計およびガルバノスキャナを用いた走査型時系列ステレオPIVと走査型LIFシステムの基本システムの設計を行った.ただし,4ヶ月という長い納期の問題でガルバノスキャナ本体の購入が年度内に間に合わなかったため,実際にシステムを稼動し三次元計測を行うには至っていない.その遅れを取り戻すため,当初計画にはなかったが,本研究を遂行するにあたって極めて重要となる以下の研究を行った.詳細は「研究実績の概要」で記述したので,ここではその概要のみを記述する.(1) 既存の噴流拡散水槽を用いた反応乱流場の基礎データの取得:計測対象を当初の格子乱流のみならず,噴流拡散場にも広げる.噴流拡散水槽は既にあるので,この拡散場における速度と反応物質濃度の瞬間同時計測を行った.このデータはガルバノスキャナを用いたシステムで計測されたデータの妥当性を検討するために用いる予定である.なお,測定結果を速報として日本機械学会論文集に投稿し,採択が決定されている.(2) 反応乱流場の三次元直接数値計算:実験結果の妥当性を数値計算により検討するために実行した.実験とは物質のシュミット数が大きく異なるが,乱流場の構造および反応場についての重要な基礎データを取得することができた.なお,結果を速報として平成24年9月に開催される国際会議において口頭発表予定である.このように,装置とシステムの構築に関してはやや遅れがみられるものの,それを補って余りある成果を実験と数値計算の両方から得ることができた.これらを勘案し総合的に判断すると,研究はおおむね順調に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度において装置の設計およびガルバノスキャナを用いた走査型時系列ステレオPIVと走査型LIFによる速度・反応物質濃度の三次元計測システムの基本設計が終了したので,今後は実際に装置を作成し,開発したシステムを用いた三次元計測を行う.当該年度の研究で噴流拡散場における速度・反応物質濃度の同時計測および三次元直接数値計算を実行したので,開発したシステムで得られた計測結果と比較しその妥当性の検討を行う.システムの妥当性が確認された後,速度こう配テンソルに基づく乱流の三次元秩序構造を抽出や,その抽出された構造と無反応あるいは反応性物質の混合現象との関連を調べる.最終的には,実験結果から既存の乱流モデルによる予測値と実測値との比較を行い,その予測精度を検証する.また,実験結果に基づいて,既存の乱流混合反応モデルの改良,または必要に応じて新たなモデルの構築・提案を行う.研究成果を,国際会議や論文として世界に発信する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費として,ガルバノスキャナ本体(440千円)および縦型の拡散水槽製作費(約300千円)を使用する.これらの合計金額がほぼ次年度使用額に相当する.当該研究費が生じた状況であるが,ガルバノスキャナを用いたシステム設計は12月頃に終了したものの,スキャナ本体の納期が4ヶ月と長かったため,年度内の納品に間に合わなかった.同様に,拡散水槽も設計は終了したものの,年度内の納品に間に合わなかった.ただし,システムで必要となる周辺機器の購入は全て完了している.未発注のものはいずれもすぐに発注できる段階にあり,8月中には全て納品される予定であるので,納品され次第実験にとりかかる予定である.なお,次年度は50万円の予算があるが,これは実験で用いる薬品,トレーサ,データ記憶媒体等の消耗品の購入,および研究成果発表のための旅費および論文投稿費用等に使用予定である.
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