2011 Fiscal Year Research-status Report
QMDの高速化に向けた相互作用積分の数値解法に関する研究
Project/Area Number |
23656139
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
土井 謙太郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 講師 (20378798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川野 聡恭 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (00250837)
新宅 博文 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (80448050)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 原子・分子物理 / 流体工学 / 分子流体力学 / 数値積分法 / 量子力学 / 分子動力学 |
Research Abstract |
本研究では,電荷移動を伴う分子流動現象に関する量子分子動力学解析(QMD)の超高速化を目指し,従来法を超越する数値解析手法の開発に取り組む.近年のバイオ・ナノデバイス開発の加速度的な発展において,本研究のQMDはミクロスケールにおける電子の挙動をも忠実に予測する技術となることが期待される.電子の流動を分子動力学解析とカップルさせるためには,電子の時間発展とともに原子核と電子間の相互作用を計算する必要があり,従来の分子動力学解析に比して膨大な計算を必要とすることが難題のひとつである.そこで本研究では,大規模系におけるQMD解析を実現するために有効な電子波動関数の展開法と求積法を開発する.電子について古典粒子と量子としての混在を許しながら,量子としての電子については数値積分により相互作用を計算する.そのとき,原子間結合を形成する電子についてのみ高精度の計算を要求し,それ以外の電子については計算の高速化を重視する簡便法を提案する.本研究により,これまでは現実的ではなかった生体高分子の電気的応答特性やナノ構造物の電気伝導性等のダイナミクスに関する数値解析が実現される. 平成23年度は,原子核の運動に伴う電子波動関数の時間発展について,その振る舞いを調べた.二状態の原子配置から,それらの間にあると考えられる原子配置を線形補完で与えることにより,原子核の運動と電子波動関数の移動を同じ時間スケールで計算を行った.その結果,分子構造に対して電荷移動の影響が小さいと考えられる系については,第一原理分子動力学の結果と一致を見たが,電荷移動の影響が大きいと考えられる系において電子は基底状態から外れた経路を動くことが示された.本結果については,専門分野の国際会議にて発表を行った.今後は,励起する電子波動関数を見極め,それについて計算効率を上げるための工夫を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述にあるように,当初に目標としていた計画は着実に進行していると言える.また,研究を遂行する上で,次に解決すべき課題も提示された.本研究に関連した研究成果が査読付き海外学術雑誌に掲載された.また,国際会議にて成果発表を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度において,電子波動関数のクラス分けを行うことにより,量子力学的に扱うべきエネルギー準位とイオン核周りに安定して存在している領域に分け,動力学の計算精度向上と高効率化を目指す.分子構造の変化に伴い,その影響を強く受けると考えられる準位については高精度の積分計算を要求されることから,それを見極めながら計算方法に工夫を施す必要性が本年度の結果より明らかとなった.一方,化学結合を強く形成しているエネルギー準位にある電子に対しては,微小な分子構造変化の間は線形補完で近似することが可能と仮定する.このように,高精度を要求する計算領域に計算コストをかけ,その分,微小変化と見れる領域は計算精度を落としながらも,現象の本質を表す手法を提案することを目標とする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は,高精度の計算が要求されることから相当の計算機資源が必要になると考えられる.そのため,今年度に導入したワークステーションを駆使しながらも,大規模高精度計算については,外部研究機関の計算機センターの使用を検討する.そのための計算機使用料として予算を計上する.また,データのストレージにも専用ファイルサーバや大容量ハードディスクの導入を想定している.また,研究成果については積極的に国際会議にて発表することからその旅費を計上する.
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