2012 Fiscal Year Annual Research Report
QMDの高速化に向けた相互作用積分の数値解法に関する研究
Project/Area Number |
23656139
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
土井 謙太郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20378798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川野 聡恭 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (00250837)
新宅 博文 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80448050)
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Keywords | 原子・分子物理 / 流体工学 / 数値積分法 / 量子力学 / 分子動力学 |
Research Abstract |
本研究課題は,分子動力学法に電荷移動の効果を考慮することにより,電気化学反応(酸化還元反応)等工学的に注目される分野において量子力学・量子化学解析手法を適用することを目標として電子波動関数の遷移に関する数値解析手法の効率化を試みたものである. 平成23年度には,第一原理電子状態計算および分子動力学法をコンシステントに解くことにより,各時点で平衡状態を仮定した条件下での電荷移動を伴う分子動力学解析を行い,グラフェン表面における水素分子の解離吸着の可能性を示した.ひずみを持つグラフェン表面には電荷分布の偏りがあり,水素分子の衝突とともに水素分子からグラフェンへの電荷移動が生じるとともに,一方の水素原子が電子状態のひずみを緩和するように吸着し,他方は中性原子として解離することが示された.さらに,電子過程についても非平衡状態を考慮するために,原子核の移動に伴う静電ポテンシャルの遷移に対する電子波動関数の伝播の数値解析手法を提案し,原子核の移動に伴う非平衡電子過程の解析例を示すことに成功した. 平成24年度には,電極表面での電荷移動を伴う電流電圧特性の解析に対して,本解析手法の有効性を示すため,電極より放出される価電子が分子の静電ポテンシャルの散乱を受けながら非平衡定常状態に至る系を数値解析を用いて実現した.初期条件で与えられる速度分布と電子が分子に散乱された後の分布の差から,それらが定常になる条件を見出す手法を見出した.この手法を用いて,トンネル電流による一分子検出の実験結果に対して定性的一致を示すことに成功した. 今後は,更なる高速かつ高効率化を目指すために本研究結果より得られた価電子帯近傍にある電荷の移動に集中した解析に特化することが課題であり,その結果より実験結果に対する定量的評価が継続的な目標である.
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