2012 Fiscal Year Annual Research Report
電気穿針による魚卵内への耐凍結・乾燥保護物質の導入法の開発
Project/Area Number |
23656144
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白樫 了 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (80292754)
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Keywords | 誘電操作 / 魚卵 / 誘電特性 |
Research Abstract |
電場操作の予備実験:中空針-平板電極による魚卵の誘電泳動と局所電気絶縁破壊を確認し,魚卵が中空針にやや強く接していれば,条件を選ぶことで電気パルスによる穿刺が可能であることが確認できた.また,平板が魚卵に接していなくとも,穿刺できることも確認した.このことより,提案手法による電気穿刺が可能であることがわかった. 魚卵の誘電特性の測定:メダカの魚卵を使用して,回転誘電スペクトル測定を行い,魚卵内の各部分の誘電率と導電率の測定ができた.また,分化の進行状態により,回転誘電スペクトルに顕著な差が見られたことから,この手法で魚卵の分化状態を監視することが可能であることがわかった. 穿刺に必要なパルス条件の測定:メダカ卵の支持液の導電率を変化させ,穿刺に必要な印加電気パルスの長さと強度の測定をおこなった結果,一定程度までは導電率が高いほど穿刺に必要な電圧が低いこと,パルス長が短いほど高い電位が穿刺に必要であること,穿刺に必要な電圧はあるパルス長以上では一定値になること,がわかった.さらに,高い導電率では浸透圧が高くなるため,電気パルス印加で卵膜が変形して穿刺しないこと,長時間パルス長では中空針先端で電気分解が生じてしまうことがわかった. 穿刺後の孵化の有無の判定:穿刺後の魚卵を回収して,2-3日後の孵化・分化の進行状態を観察した結果,印加電圧が高い場合は全く孵化せず,低印加電圧であれば通常の孵化率の半分程度は維持できることがわかった.また,孵化には割卵(胚)と電極の位置関係の影響がある可能性が高いことも見出した. パルス電場応答解析:初年度に測定した魚卵の誘電特性に基づいて,針電極と平板電極間におかれた魚卵にパルス電場を印加した際の電位・電荷を計算した.その結果,高電圧-単パルスの場合はクーロン力が,長時間パルスの場合は,針電極の局所ジュール加熱が,穿刺の原因となっていることが示唆された.
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