2011 Fiscal Year Research-status Report
MRI用小型永久磁石のための相変化蓄熱材を用いた±0.01℃温調システムの開発
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23656156
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小川 邦康 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (50272703)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 核磁気共鳴法 / 永久磁石 / 温度制御 / 相変化 |
Research Abstract |
小型永久磁石のネオジウム磁性体周囲に±0.01℃で高精度に温調された相変化蓄熱材を循環させる温調システムを開発し、磁石の磁場を±10 ppm/10 hourで安定させることを本研究の目的とする。平成23年度に行った研究内容と実績について以下に示す。 小型永久磁石としては、ネオジウム磁性体の周囲に冷却媒体を流せるように工夫した対向型永久磁石を用いる。小型永久磁石の設計には研究協力者である株式会社エム・アール・テクノロジーの協力を得て行い、磁石はNEOMAXエンジニアリング株式会社に製作を依頼した。その結果、磁場強度0.3 Tesla、計測領域幅120 mmの冷媒循環式小型永久磁石が慶大小川研究室に納品された。 小型永久磁石の磁場を安定させるために、磁場を形成しているネオジウム磁石の温度を±0.01℃で安定させる必要がある。ネオジウム磁性体は磁束を閉じ込めるための鉄構造部に固定され、鉄構造部と勾配磁場コイルから熱が流入する。これらの熱流入によってネオジウム磁性体の温度が変動し、磁場強度が変動する。 磁石温度を安定させるために、まずは鉄構造部からの熱流入を抑制させる必要がある。そこで、磁石周囲に銅板を設置し、その銅板に恒温水を循環させて温調を行った。磁石を循環水温度の銅板と接触させるのではなく、断熱材を間に挿入して磁石の温調を行った。これにより、磁石温度は±0.1℃以内で安定させることができた。 磁石温度の安定性は磁場強度、すなわち、NMR信号の周波数の変化として現れる。そこで、NMR信号の周波数を一定時間ごとに取得するシステムを開発し、周波数を計測した。この結果、長時間に渡ってNMR信号の周波数を数百Hz程度以内の変動に抑えることができた。 さらに循環水温度を安定させるために、固液相変化を利用した蓄熱材を冷却媒体として流すことができるシステムを製作している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の理由によって順調に進展していると考える。(1)小型永久磁石の設計と納品がスムーズに進行した。(2)循環水による恒温化が比較的うまく行っている。(3)磁石の温度変動が循環水によってうまく抑えられている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に開発したシステムを改良し、相変化蓄熱材を循環させる温調システムを開発する。このシステムでは、冷却媒体には固液相変化を利用した蓄熱材が混入されている。この冷却媒体は固相化槽で20℃まで冷却されて約50%まで固相化される。次に、冷媒は融解槽に送られて加熱され、冷媒全体が融解温度の25℃となる。固相化率が40%程度となった冷媒は冷媒温調槽に送られて融解温度の25℃±0.01℃で温調された後に、ネオジウム磁性体の周囲に搬送される。その後、冷媒は固相化槽に戻されて循環する。このシステムを用いることでネオジウム磁性体の磁場強度が安定する。この固液相変化蓄熱式高精度温調システムを完成させる。 磁場安定性が±10 ppm/10 hoursの範囲内となるように冷媒循環流量や固相化槽、融解槽の温度、冷媒の固相化率を調整することで達成する。 磁場安定性が±10 ppm/10 hoursとなれば共鳴周波数が安定し、スペクトル帯域を狭くした低ノイズ計測が可能となる。具体的には、検波時の受信フィルター幅を10kHzから1kHzと狭くすることで、信号対雑音比は3.3倍に向上する。この効果を検証するために、フィルター帯域を10~1 kHz以下へと減少させた際のNMR信号のスペクトル計測を行い、信号対雑音比を求めてノイズの低減効果を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費はすべて消耗品として使用する。内訳は相変化蓄熱材費に20万円、配管材料費に15万円、実験装置製作費に15万円を計画している。
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