2012 Fiscal Year Research-status Report
MRI用小型永久磁石のための相変化蓄熱材を用いた±0.01℃温調システムの開発
Project/Area Number |
23656156
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小川 邦康 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (50272703)
|
Keywords | 核磁気共鳴法 / 永久磁石 / 温度制御 / 相変化 |
Research Abstract |
小型永久磁石のネオジウム磁性体周囲に±0.01℃で高精度に温調された相変化蓄熱材を循環させる温調システムを開発し、磁石の磁場を±10 ppm/10 hourで安定させることを本研究の目的とする。平成23年度と24年度に行った研究内容について以下に示す。 小型永久磁石としては、ネオジウム磁性体を磁場発生部とし、鉄構造部を組み合わせて磁気回路とした小型永久磁石を製作した。小型永久磁石の設計には研究協力者である株式会社エム・アール・テクノロジーの協力を得て行い、小型永久磁石はNEOMAXエンジニアリング株式会社が製作した。磁石の性能は磁場強度0.3 Tesla、磁石間隔140 mmとした。本磁石に適合し、計測領域が約80㎜球となる勾配磁場コイルを上記の研究協力者の下に設計・製作した。その際、磁石と勾配磁場コイルの間に10㎜の隙間を空け、勾配磁場コイルが発する熱を冷却媒体が取れるように設計した。また、冷媒の温度を安定さることができるように±0.01℃の測定精度を持つ白金測温体の温度計を導入した。 磁石温度の安定性には、磁石周囲から鉄構造部への熱流入と勾配磁場コイルから磁性体への熱流入を最小限に抑える必要がある。そこで、鉄構造部に対しては磁石周囲にアルミニウム板を設置し、その板に恒温水を循環させて温調を行った。また、勾配磁場コイルには相変化物質を含む冷媒を流すことができるアクリル製の冷却板を製作した。それらを磁石に設置して磁石の恒温化を行うことができる。 MRI信号を受信する際に狭帯域のフィルターが必要となる。そこで、既存の検波器をフィルター帯域10~1 kHzで設定できるように改造した。 本システムの計測領域および共鳴周波数に適合するRF検出コイルを製作し、MRI信号を取得した。狭帯域フィルターを設定した際のMR画像の取得試験を行い、適切に稼働していることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の理由によって順調に進展していると考える。 ①小型永久磁石の設計と納品がスムーズに進行した。 ②勾配磁場コイルの設計と納品がスムーズに進行した。 ③冷却循環水の温度を計測し、循環水の恒温化が比較的うまく行っている。 ④勾配磁場コイルからの放熱が非常に大きいことが分かり、冷却構造を考慮した勾配磁場コイル冷却用の部品を製作して集中的に冷却する機構がうまく行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに製作した装置と評価実験の実施により磁石温度を大きく変える原因は勾配磁場コイルでの発熱であることが分かった。その割合はおおよそ勾配磁場コイルから磁性体への熱流入が9割、磁石周囲から鉄構造材への熱流入が1割であると推測される。 そこで、勾配磁場コイルからの発熱を効果的に除去し、磁性体の温度を安定化させるために勾配磁場コイルと磁性体の間に相変化蓄熱材を循環させる温調システムを開発して、挿入する。冷却媒体として25℃の融点を持つパラフィンを用いる。この冷却媒体を固相化率が約40%になるように調整して、勾配磁場コイルの冷却流路に流入させて融解温度の25℃±0.01℃の範囲内で温度を安定させる。このような固液相変化蓄熱式高精度温調システムを完成させる。また、鉄構造材にはアルミニウム冷却板に恒温水を循環させて恒温化させる。2系統の冷却系統を完成させる。 このシステムを用いて、小型永久磁石の磁場安定性が±10 ppm/10 hoursの範囲内となるように冷媒循環流量や固相化槽、融解槽の温度、冷媒の固相化率を調整することで達成する。±10 ppm/10 hoursはNMR信号の共鳴周波数を時系列的に計測して評価する。 小型永久磁石の温度が安定化した後に、検波時の受信フィルター幅を10kHzから1kHzと狭くしてMRI信号を受信する。この狭帯域フィルターを用いることで信号対雑音比を求めてノイズの低減効果を評価する。その後、MRI計測を行い、磁場が安定したことによってMR画像の信号対雑音比が向上したことを確認する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費はすべて消耗品として使用する。内訳は相変化蓄熱材が大量に必要になるためそれを購入する費用として30万円、冷却媒体の温度安定化装置を含む配管材料費に10万円、磁石周囲の温調板製作などの実験装置製作費に10万円を計画している。
|