2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23656163
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 健太郎 東京工業大学, 精密工学研究所, 教授 (20242315)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 超音波 / 非接触 / 搬送 / 進行波 / 放射力 / 音圧 / たわみ振動 / 液体 |
Research Abstract |
製薬・各種分析などの分野では微少量の液体をどこにも触れることなく輸送することが望まれている。本研究では、超音波放射力により液滴を空中にトラップできることに着目し、液体を浮かせながら搬送する、いわば「非接触液送パイプ」の技術を生み出す。このために液体の浮揚、搬送に適した進行波音場を励振できる音響導波路を新たに考案、設計する。 そのために、平成23年度は、音場の閉じ込めの良さと、進行波音場励振のしやすさから、短冊状振動板を半円形断面の反射体で囲んだ搬送経路を考案し、液滴のトラップ、搬送に適した音場モードの選択、振動板の選択などを行った。その結果、幅15 mm、長ささ200 mmのステンレス鋼製の振動板の片方から圧電振動子で駆動し、反対側をシリコンゴムで終端することで、37 kHzのたわみ振動進行波の励振に成功した。この振動板を内半径16 mmのアクリル樹脂半円筒反射板で覆い、この中に進行波音場を発生させた。ここで、レーザドップラ振動計による振動板の振動分布測定、シリコンゴムの温度測定などから、進行波発生の様子を観測し、振動板の進行波励振条件を明らかにした。一方、プローブマイクロホンや光ファイバ音圧プローブによる測定により、発生音場の強度が大きくなる振動板-反射板距離などを決定し、所望の音場になっていることを確かめた。 この装置を用いて、直径約1.5 mmのエタノール液滴を最大速度2.3 m/sで60~70 mmの距離を非接触搬送することに成功した。高速度カメラを用いた観測により、液滴は鉛直方向の音圧の節に沿って、音場伝搬方向に搬送されることが確認された。これは予想通りの動作であったが、音場の均一性がまだ不十分であるため、搬送経路が蛇行していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では、平成24年度は液滴の非接触搬送に適した音場の実現方法の検討と、そのための振動系、反射板の設計、進行波の実現までを目標としていた。しかし、実際には、非接触搬送に適した進行波音場の実現にとどまらず、実際に液滴の搬送まで行うことができた。 これは、本研究の目的である液滴の完全非接触搬送に成功したことになる。しかしながら、より安定な搬送、搬送距離の延伸のためには、当初予定のような振動系や音場形成法のさらなる検討が必要である。また、円筒形の搬送路を想定していたが、今回実現したものは半円断面のものである。
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Strategy for Future Research Activity |
液滴を非接触で搬送することには成功したが、今後は搬送性能の向上とさらなる機能性の付与について研究したい。そのために以下のことを行う。 1)搬送の安定度の向上を行うために、振動板によりよい進行波を得られる条件を追求する。2)搬送路形状として当初予定の円筒形状も検討すると同時に、終端開口部の音響的な振る舞いを明らかにして、進行波音場の定在波比を向上させる。また、音場分布の乱れを抑圧して、搬送経路の蛇行を減らす。3)液滴の搬送のようすを高速ビデオでより詳細に観測して、よりより搬送路設計に反映する。4)搬送する液滴の間隔を保つことや液滴の液量の制御など、より高い機能性に関する準備検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
音場分布を精密に測定するために、プローブマイクロホンを移動するモータステージを購入する。また、振動子に必要な圧電セラミック素子、振動板の材料や反射板の材料を購入する。成果発表のための旅費を計上する。
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Research Products
(1 results)