2012 Fiscal Year Annual Research Report
ダイナミックテンセグリティから探る個体発生的時間スケールの構造適応様式
Project/Area Number |
23656171
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石黒 章夫 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (90232280)
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Keywords | 自己組織化 / 適応 / 真正粘菌 / 個体発生 / テンセグリティ |
Research Abstract |
生物は,自身の身体に有する膨大な自由度を巧みに操りながら,適応的かつ多様な振る舞いを発現している.生物が示すこのような優れた運動機能の背後には,さまざまなダイナミクスを有する多数の適応メカニズムが有機的にカップリングしていると考えられているが(以下このことを,適応メカニズムの多重時間スケール性と呼ぶ),その機序は依然として明らかになっていない. そこで本研究では, 適応メカニズムに内在する多重時間スケール性を考察するために,原初的な真正粘菌変形体とモデル生物としたアプローチを展開した.具体的には,多重時間スケール性に基づく適応メカニズムを効果的にモデル化するために,真正粘菌変形体が原形質流動によってその周辺部に仮足と呼ばれる突起を自発的に形成する現象に着目した.そしてこの仮足の自発的生成・消滅が,周辺部のスティフネスを原形質の流動状況に応じて調整することから生み出されるとの作業仮説を立て,力学場環境に応じた仮足構造形成過程のモデリングを試みた.本研究では,原形質を効率よく流動させることに寄与する生化学振動子のリズム調整に関する自律分散制御則と,原形質の流動状況によって周辺部のスティフネスを自発的に改変する自律分散制御則の2つをアメーバ様ロボットに実装した.そして,アメーバ様ロボットを狭窄空間に突入させ,周辺部のスティフネス改変の時定数を変化させ,力学場に応じた構造形成や運動パターンの生成を再現できるかを確認したところ,ふたつの適応メカニズムの時定数が異なる場合にもっとも優れたパフォーマンスが発現することが明らかになった.これはまさに生物制御の多重時間スケール性を強く示唆する結果であり,きわめて重要な知見である.本研究の成果は,適応性を高めるための自律分散制御方策の設計論に対して新奇な視座を提供できると期待される.
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