2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23656176
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高畑 智之 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 講師 (80529652)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 知能機械 / マイクロ・ナノデバイス / 三次元加工 / 液体レンズ / 多層レンズ / 水晶体 |
Research Abstract |
本研究では、ヒトの眼の水晶体と同程度に軽量かつ結像性能がよく、焦点調節機能を持つレンズを実現するために、水晶体と同様に液体を有機膜で多層にカプセル化した構造を有するレンズの研究を行う。平成23年度は、光学シミュレーションによる水晶体の構造と機能の関係の解明、および非球面液体レンズ作製方法の研究を行った。 光学シミュレーションについては、光学設計ソフトウェアCODEVを導入し、ヒトの水晶体の光学的モデルをもとに、光線追跡による光学特性のシミュレーションを行った。また、液体レンズの変形の計算について、有限要素法解析のソフトウェアであるCOMSOLを用いて計算することにし、計算モデルの作成を進めた。 非球面液体レンズの形成のための型として、シリコンの三次元加工に関して検討した。これまでは三次元加工の深さが最大で100μmであったものを、最大で厚さ400μmのシリコンウエハを貫通するまで加工できるようにエッチング条件を調整した。これにより、曲面部の厚さが100μmの型を作製できるようになった。一方で、シリコンで型を作製する方法はレンズの曲面部の厚さが制限されるという課題があることから、他の方式として、三次元プリンタを利用した型の作製についても検討した。これはABS樹脂の線材を熱で溶かしながら立体的に走査して任意の形状を形成する手法である。三次元プリンタの装置を組み立て、三次元形状の試作を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液体レンズを作製するための三次元形状の型の作製方法について、シリコンの三次元加工を用いた方法の研究は予定通り進展し、それに加えて三次元プリンタを用いた三次元形状の研究を行った。光学特性のシミュレーションについては予定通り進行したものの、レンズの周囲に引っ張り力を加えたときのレンズの変形の解析については、有効な結果が出るには至らなかった。以上を総合しておおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
液体レンズの変形のシミュレーション、液体レンズの多層化、液体レンズを変形させる方法の研究を行う。 レンズの周囲に引っ張り力を加えたときのレンズの変形について、引き続きCOMSOLを用いた解析を行う。これにより液体レンズの形状、パリレン膜の厚さ等のパラメータを決定する。 液体レンズの多層化の方法として、パリレン膜同士のボンディングを用いた方法を検証する。パリレンボンディングは、二つのパリレン膜を重ねて、熱と圧力を加えて接着する方法である。カプセル化した液体レンズを別のシリコン型で挟んで、パリレンボンディングによりさらにカプセル化し、多層カプセルを形成する。 液体レンズの焦点を変えるために、周辺部を半径方向に引っ張る方法を検討する。静電アクチュエータを用いた方法と、人工筋肉を用いた方法の二つを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、物品費として液体レンズ試作の材料であるシリコン、試薬、エッチングのための高圧ガスなどを計上した。旅費として、研究成果を発表するための海外渡航費を計上した。その他として、試作のために必要となる装置の使用料およびメンテナンス費を計上した。 平成23年度の使用予定において研究調査のための海外渡航の旅費を計上していたが、レンズの変形解析の研究がやや遅れたことから取りやめた。そのため、次年度で使用する研究費が生じた。この研究費は次年度において研究の目的を達成するためのレンズ試作の物品費として使用する。
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