2011 Fiscal Year Research-status Report
蚊の穿刺動作にヒントを得た負剛性ばねメカニズムの提案と無痛穿刺デバイスへの応用
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23656188
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
青柳 誠司 関西大学, システム理工学部, 教授 (30202493)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | バイオメカニクス / 蚊 / 穿刺動作 / FEM / MEMS / マイクロニードル |
Research Abstract |
本課題では,蚊の口針のうち,穿刺に主要な役割を持つ上唇と子顎2本の合計3本の協調動作について,定性的な解析モデルを構築し,上唇の穿刺に関して「負剛性ばね」が実現されていることを明らかにする.これに基づき,力を加えなくても針が皮膚に「ずぶずぶ」と入っていくような新しいメカニズムを提案する. 本年度は,負剛性ばねモデルの妥当性を明らかにするために,蚊の口針と,頭・胴体・脚等の体全体との協調動作を複数の高速度カメラで同期観察するシステムを構築した.協力関係にある大日本除虫菊(株)から蚊の供給を受け,その人工皮膚への穿刺動作を詳細に観察した.口針を高倍率で詳細観察しながら,コマを同期させた別の高速度カメラにより,子顎を動かす筋肉の動きや,頭部の動きを観察できた.これにより上唇,小顎2本の協調動作を時間をパラメータとして定量的に解析することができた. 観察結果から得られたデータに基づき,非線形有限要素法(FEM)を用いて3本の針が皮膚組織を破壊しながら陥入していくシミュレーションを行った.その結果,3本の針を蚊と同様に位相差を持たせて協調させながら刺すことにより,穿刺抵抗力が低減することを明らかにした. さらに.マイクロマシン技術を用いてシリコン製の蚊とサイズと形状が同一な3本組の針を作製し,これらを互いに時間位相差を設けて人工皮膚に穿刺する実験を行うことで,負剛性ばねモデルを裏付けるためのデータの取得を行った. これらシミュレーション,実験で得られたデータを用いて,次年度に負剛性ばねモデルの妥当性を詳細に検討する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蚊の穿刺動作の詳細観察に成功した.特に,蚊の小顎のギザギザ形状が進行する際には組織との接触面積を減らして抵抗力を低減し,後退する際にはアンカー効果により中央の上唇の進行を容易にしていることを明らかにした. 非線形FEM(有限要素法)解析により,針が組織を破壊しながら陥入していく様子をシミュレーションすることに成功した. 蚊と同様のサイズ,形状を有するマイクロニードルをMEMS技術を用いて作製し,人工皮膚へ穿刺する際の穿刺抵抗力を得ることに成功した.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに得られた,蚊の穿刺動作の観察結果,針が組織へ陥入する際のFEMシミュレーション結果,マイクロニードルを用いた穿刺抵抗力の実験結果を総合的に統合し,本研究の最終目標である「負剛性ばねモデル」の妥当性検証を行いたい. 現在の実験装置は,3本の針を独立して駆動することが可能であるが,針同士が互いに反力を伝え合う構造にはなっていない.蚊は小顎を引く際の組織から受ける抵抗力を,上唇を推進する力に加えることで穿刺を容易にしているが,実験装置を改良してこれと同じことが実証できるようにする. 並行してFEM解析もさらに詳細に進める.その際,針だけでなく体全体の動きも考慮に入れてシミュレーションを行うことで,負剛性ばねモデルの妥当性をさらに詳細に明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
蚊の詳細観察装置を改良するための消耗品,MEMSマイクロニードルを作製するためのシリコンウエハ,薬品,ガス等の消耗品,穿刺実験装置を針同士で反力を伝えるようにできるように改良するための消耗品等が必要となる.このため,次年度の研究費は主に物品費として使用する.
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Research Products
(5 results)