2012 Fiscal Year Research-status Report
蚊の穿刺動作にヒントを得た負剛性ばねメカニズムの提案と無痛穿刺デバイスへの応用
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23656188
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
青柳 誠司 関西大学, システム理工学部, 教授 (30202493)
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Keywords | バイオメカニクス / 蚊 / 穿刺動作 / FEM / MEMS / マイクロニードル |
Research Abstract |
本課題では,蚊の口針のうち,穿刺に主要な役割を持つ上唇と子顎2本の合計3本の協調動作について,定性的な解析モデルを構築し,上唇の穿刺に関して「負剛性ばね」が実現されていることを明らかにすることを目的とする. 本年度も継続して,昨年度構築した蚊の口針と,頭・胴体・脚等の体全体との協調動作を複数の高速度カメラで同期観察するシステムを用いて,蚊(大日本除虫菊(株)から供給を受けた)が人工皮膚へ穿刺する際の動作を詳細に観察した.正確に人間の皮膚を再現するために,表皮・真皮を模擬したベースポリマーの表面に人間の角質層を模擬した適度な固さの極薄ポリマーをさらに載せる工夫を行った.また人工皮膚内部に血管を模した円筒状の空洞部分をマイクロ加工し,学内保健センターの協力により採取した人間の血液をそこに注入した.これらを用いて,蚊が上唇,小顎等の各パーツを協調動作させながら人工皮膚内で口針を進ませて血液に到達し,それを吸引する様子の観察に成功した. 観察結果から得られたデータに基づき,昨年度に引き続き3本の針が皮膚組織を破壊しながら陥入していくシミュレーションを行った.ギザギザ状の突起を先端に有する針を振動させながら刺すことにより,穿刺抵抗力が低減することを明らかにした. さらに.マイクロマシン技術を用いて蚊と同サイズの微細針の作製を行った.昨年度までの単結晶シリコン製の針は脆性破壊しやすかったため,本年度は生体適合性を有するタングステンワイヤを用い,これに溝加工を施して,薄膜堆積により蓋をするプロセスを提案し,これにより中空な微細針の作製に成功した.この針を用いて液体の吸引・吐出にも成功した.今後この針を用いて蚊の動作を模擬した穿刺動作を行い,人工皮膚内から血液を吸引することに挑戦したい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人間の皮膚を模擬した人工皮膚内部に血管を模した円筒状の空洞部分をマイクロ加工し,人間の血液をそこに注入した.これらを用いて,蚊が上唇,小顎等の各パーツを協調動作させながら人工皮膚内で口針を進ませて血液に到達し,それを吸引する様子の観察に成功した.これは申請者の知る限りでは世界で初めてのことである. 観察結果から得られたデータに基づき,昨年度に引き続き3本の針が皮膚組織を破壊しながら陥入していくシミュレーションを行い,ギザギザ状の突起を先端に有する針を振動させながら穿刺することの有効性を確認できた. マイクロマシン技術を用いて蚊と同サイズの微細針の作製を行った.昨年度までの単結晶シリコン製の針は脆性破壊しやすかったため,本年度は生体適合性を有するタングステンワイヤを用い,これに溝加工を施して,薄膜堆積により蓋をするプロセスを提案し,これにより中空な微細針の作製に成功した.この針を用いて液体の吸引・吐出にも成功した.
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Strategy for Future Research Activity |
蚊の穿刺動作の観察結果,マイクロニードルを用いた穿刺抵抗力の実験結果に基づき,本研究の最終目標である「負剛性ばねモデル」の妥当性検証を行う.特に次年度は,針だけでなく体全体の動きも考慮に入れる.口針と体全体の協調動作を前年度構築した同期高速度カメラシステムを用いて観察し,その結果に基づき,FEM シミュレーションを行い,穿刺メカニズムを詳細に検討する. また,マイクロニードルの座屈を防止するための治具とマイクロニードルの駆動機構を備えた,無痛穿刺デバイスの設計・開発も行う. さらに,開発に成功した中空マイクロニードルの性能向上(吸引・吐出速度の向上等)にも取り組む.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
蚊の詳細観察装置を改良するための消耗品,MEMSマイクロニードルを作製するためのシリコンウエハ,薬品,ガス等の消耗品が必要となる. マイクロニードルを作製する際にメッキの技術が一部必要になるが,研究室でのこの技術に対する経験が浅く,良い製作結果が得られていない.このため,メッキの専門家に技術指導を仰ぐための費用も計上する. また学会発表のための経費も計上する.
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Research Products
(15 results)