2013 Fiscal Year Annual Research Report
蚊の穿刺動作にヒントを得た負剛性ばねメカニズムの提案と無痛穿刺デバイスへの応用
Project/Area Number |
23656188
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
青柳 誠司 関西大学, システム理工学部, 教授 (30202493)
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Keywords | バイオメカニクス / 蚊 / 穿刺動作 / FEM / MEMS / マイクロニードル |
Research Abstract |
本課題では,蚊の口針のうち,穿刺に主要な役割を持つ上唇と小顎2本の合計3本の協調動作について,定性的な解析モデルを構築し,上唇の穿刺に関して「負剛性ばね」が実現されていることを明らかにすることを目的とする. 本年度は最終年度となり,一昨年度,昨年度に継続して高速度カメラを用いて,蚊(大日本除虫菊(株)から供給を受けた)が人工皮膚へ穿刺する際の動作を詳細に観察した.また口針をマイクロ材料試験機にセットして,引張試験,三点曲げ試験を行った.その結果,蚊の針のヤング率(135 MPa)は樹脂であるポリ乳酸(PLA)と同等であるが,破断応力はPLAの約3倍,曲げ応力は10倍と非常に大きいことが判明した.すなわち,蚊の針は強靭であり,特に曲げに強いことが判明した.この特性が,蚊の針が柔軟であるにも関わらず皮膚に穿刺可能である理由の一つであると示唆される. 昨年度まで作製してきた単結晶シリコン,タンスグステンに代わり,本年度は微細切削加工を用いてステンレス製のマイクロニードルの作製を試みた.中央のストレート形状(上唇を模擬),その両脇のギザギザ形状(小顎を模擬)の合計3本の針を作製し,蚊と全く同じ協調動作をさせながら人工皮膚に穿刺した.この結果,前年度までに得られていたのと同様に,ギザギザ形状と協調動作が穿刺抵抗力低減に大きく寄与することを確認できた. さらに,座屈を防止するための治具シートの提案と作製,ダイシング加工を用いたステンレス製中空針の作製とそれによる人工皮膚からの血液の吸引,高吸水性ポリマーを用いた血液吸引機構の開発等を行った.このように本課題である蚊を模倣した無痛針の開発に向けた,様々な関連課題に取り組んだ.
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