2011 Fiscal Year Research-status Report
ナノチューブ電子エミッタ型太陽エネルギー変換システムの可能性探究
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23656197
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
滝川 浩史 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90226952)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / エミッタ / 太陽エネルギー変換 / 太陽熱 / 太陽光 / 真空デバイス |
Research Abstract |
CO2排出量を削減し,地球温暖化を防止するためには,再生可能エネルギーのひとつである太陽エネルギーの積極的な利用が必要である。本研究では,カーボンナノチューブを電子エミッタとして用いた真空式太陽エネルギー変換デバイスの実現可能性を萌芽研究として探る。この変換デバイスは,太陽熱と太陽光とを併用した変換駆動方式を狙うものである。本研究期間においては,新規デバイス構造および機能発現の可能性探求を主目的としている。本研究の特色は,電子放出特性に優れたナノカーボンを用いること,研究代表者が考案した長寿命電子放出素子構造を用いること,新規熱光併用発電デバイスの可能性に挑戦することなどである。新規考案の長寿命電子放出素子は,多孔エミッタと多孔グリッドを有し,電子はその多孔をすり抜けてコレクタ(アノード)へ到達する構造を有する。そのため,スルーホール型電子放出デバイスと呼ぶ。初年度は,2種のスルーホール型電子放出デバイスを作製し,加熱した際に電子放出特性が変化するかどうかを確かめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既開発のスルーホール型電子放出素子では,イオンアブソーバが金属,エミッタ基板は通常のSiウエハであった。これでは,集熱および光透過ができない。そこで,熱および光の影響を計測できるように,各要素電極など以下のようにすることを考えている。エミッタ電極:多孔処理Siウエハを用いるが,熱伝導性を確保するため,導電性カーボンをコーティングする。コレクタが対向しない面(裏面)にナノカーボンを配置する。エミッタ材:長期安定性がある多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を用いる。コレクタ:仕事関数の低いWO2塗布W基板電極を用いる。イオンアブソーバ:太陽光を透過させるため,ITO透明電極を用いる。 集熱端子:効率的な光熱変換のため,CuO2黒色コーティングを施す。シーズガス:空間電位と電極仕事関数を調整するため,セシウムガスを封入する。ガス圧を可変できるようにしておく。 以上のような設計に対し,初年度は,間接加熱機構を有したスルーホール型電子放出デバイスと直接加熱機構を有したデバイスの2種類を設計・作製した。前者はバーナーで加熱するタイプで,後者はエミッタに電熱ヒータを接触させたものである。それぞれのデバイにおいて,加熱のありなしで電界電子放出特性に変化が生じるかどうかを確認した。その結果,前者は加熱のありなしで同特性に変化がなかったが,後者は加熱するほど,低いグリッド電圧でコレクタ電流が増加した。このことから,カーボンナノチューブ電子放出素子を加熱すると電子放出効率が向上することがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
改良した各電極・デバイスを設計・製作し,次の実験を進める。(1) 電子エミッタの寿命試験。(2) 加熱および/または光照射の状態で,I-Vカーブの計測(開放電圧,短絡電流,変換効率)。同(1)は予備実験的なものであり,エミッタ安定の確認後,(2)を進める。このときの実験項目とパラメータは以下の通りである。(1)熱利用発電(パラメータ:温度,セシウム分圧,各電極間距離,など)。(2)光利用発電(パラメータ:セシウム分圧,各電極間距離,など)。(3)熱/光併用発電((1)で求めた温度範囲において,光併用時の効果を見る。)なお,本提案装置の構造をもとに,熱だけを利用した場合,つまり,熱電発電とした場合,出力電圧Vはコレクタの仕事関数φC が小さいほど高くなり,また,電流密度は熱電子を利用するためRichardson-Dushmannの式に律束される。しかしながら,今回提案の装置ではSchottky効果および外部光電効果を併用するため,このモーティブ図では解釈できない。同 (1)~(3)の実験結果を通じ,新しい動作を理解し,理論的考察や解釈を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に真空バルブ自体および電極構造の改良に用いる。
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Research Products
(2 results)