2011 Fiscal Year Research-status Report
レアアース生成を目指したガス放電励起・重水素貫流法による低エネルギー元素変換
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23656205
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
山田 弘 岩手大学, 工学部, 教授 (60125482)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | レアアース生成 / 多層膜パラジウム試料 / 重水素貫流法 / 荷電粒子検出 / 微量元素分析 / 金属薄膜電極 / CR-39 |
Research Abstract |
パラジウム板上に酸化カルシウムとパタジウムの薄膜を電磁スパッター法により交互に積層させ、試料全体として重水素貫流性の高い多層膜パラジウム試料作成した。並行して最大12気圧、温度200℃までの使用に耐え、試料の汚染が少なく、ナノ秒方形波パルス電圧が印加可能な電極をもつガス貫流実験装置を構築した。変換反応に伴い放出が期待される荷電粒子の検出効率は一般的に高いことに着目し、経済性で有利な高エネルギー粒子検出用バリオトラッカーによる荷電粒子検出を試みた。その結果、重水素使用の場合のみならず軽水素でも試料中ガス貫流に伴い試料表面から荷電粒子が放出されることがわかった。 そこで、予備実験として重水と軽水の電気分解に伴う荷電粒子検出を試みた。この目的のため、厚さ0.9mmの板状のバリオトラッカーにμmオーダーの厚さのパラジウム等の金属薄膜を密着させて電極とする電解セルを考案した。この簡素な新手法は、薄膜電極から放出されるMeVオーダーの荷電粒子の検出に極めて有効であることがわかった。その結果から低エネルギー領域での元素変換を含む核反応現象は重水素系で起こるだけに留まらず、軽水素系でも起こることが明らかとなった。これは最終的目的であるレアアース生成装置の作成に対しても貴重な知見と言える。 元素変換効率を高めるためには高い水準の重水素の貫流効率が必要条件であり、その水準より高い方がさらに有効である。そこで多層膜パラジウム試料の活性化と貫流効率向上を目指して、試料にアンペア・オーダーの直流電流を流したところ、顕著な貫流効率の向上を観た。そのため、さらなる貫流効率の向上を目指すと共に、この電流による貫流率向上の機構を探るために、計画の1年前倒しでナノ秒方形波パルス電圧発生器を作成した。なお、この電流による貫流率向上の新手法は科学・技術の他分野でも広く応用できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重水素の貫流性が比較的高い多層膜パラジウム試料作成が可能となっている。また、目標とする気圧・温度と試料汚染防止のレベルを満足し、かつ、ナノ秒方形波パルス電圧が印加可能な電極をもつガス貫流実験装置の作成を完了している。高エネルギー粒子検出用バリオトラッカーによる荷電粒子検出を試みた結果、重水素使用の場合のみならず軽水素でも試料中ガス貫流に伴いその表面から荷電粒子が放出される新知見を得ている。多層膜パラジウム試料にアンペア・オーダーの直流電流を流すという新手法を開発し、元素変換反応に求められる貫流効率を顕著に向上させた。板状のバリオトラッカーに厚さがμmオーダーのパラジウム等の金属薄膜を密着させる電極構造とする、簡素であるが荷電粒子検出に有効な新たな電解セルを提案している。その結果から低エネルギー核反応現象は重水素系のみならず軽水素系でも起こることを明確にできた。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の注目すべき成果の1つは直流大電流を多層膜試料に流すことによる重水素貫流効率の向上である。また、低エネルギー核反応は重水素系と同様に軽水素系でも起きていることから、軽水素系との比較が重要である。そこで直流大電流による軽水素貫流率に対する影響を調べ、電流効果の機構究明を目指す。作成済みのナノ秒方形波パルス電圧発生器を駆使して、重水素と軽水素のガス貫流において多層膜パラジウム試料を活性化させ、変換原料元素をリチウム、バリウムとする場合の元素変換を調べる。予備実験に導入した電気分解法の結果からさらなる新知見の取得が期待できる。そこで電極材料、電解液とその濃度、直流電流値とその印加時間等の違いによる荷電粒子発生率とそのエネルギー分布を幅広く調べ、それより低エネルギー核反応の機構究明を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
直接経費1,100千円の品目と金額の内訳は以下の通りである。重水素247千円、パラジウム板105千円、高エネルギー粒子検出板 86千円、試薬136千円、計測機器用部材165千円、機器のレンタル料125千円、外国旅費 236千円。重水素から計測機器用部材までは全て消耗品であり、備品の購入はない。重水素は30気圧1Lボンベ入りを4本使用する。パラジウム板は0.1×100×100mmのサイズ2枚を購入し、0.1×12.5×12.5mmのサイズに切り出して使用する。高エネルギー粒子検出板のバリオトラッカーとして長瀬ランダウア社製のCR-39を5枚購入し、30×30mmのサイズに切り出して使用する。試薬は実験機器と試料の洗浄用のアセトン、塩酸、硝酸、超純水およびCR-39表面エッチング用の水酸化ナトリウム等である。計測機器用部材は特殊Oリング、銅ガスケット、金細線、白金細線、使い捨てポリ手袋等である。機器のレンタル料は学内共同利用施設にあるTOF-SIMSとXPSの使用料である。外国旅費は平成24年8月12日から同8月17日に韓国Daejionで開かれる第17回低エネルギー核反応に関する国際会議(The 17th International Conference on Cold Fusion)に出席するための参加費、交通費、宿泊費6日分である。なお、参照実験用に使用する軽水素ガスは安価であり、手持ちのものを流用して済ます。
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Research Products
(12 results)