2011 Fiscal Year Research-status Report
生物の最適ネットワーク構造探索機能を利用した超高バンド幅集積回路配線形成の試み
Project/Area Number |
23656213
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
近藤 英一 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (70304871)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 超臨界流体 / メタライズ / 金属錯体 / 生物摸倣 |
Research Abstract |
神経細胞組織にみられるごとく,生物のつくる超立体的なネットワークは情報や物質を伝播するに最適な構造を有する。つまり生物は最適ネットワーク構造の求解機能を有する。このような生物の構造探索機能を利用し,超高速・高バンド幅の金属配線構造体形成を試みる。これまで上記の試みがなされなかったのは,生体の網状構造を転写・再現するに足るプロセス技術がなかったためである。本研究では超臨界流体の持つ超浸透性を利用して,三次元集積回路応用を意図した立体配線形成を行う。 具体的には網状生体組織として,葉脈を利用した。湿潤状態の葉脈を超臨界流体乾燥・脱水した。次に超臨界流体に金属錯体を溶解し,金属錯体を葉脈標本表面に含浸させる。含浸層は続くメタライズ工程の触媒層の役割を果たす。触媒を付与した葉脈標本のメタライズには超臨界薄膜堆積法ないし通常のめっきを用いる予定である。超臨界CO2を用いる場合には,有機金属錯体Cu(dibm)2を溶解し同時に添加したH2で150~200℃・10MPaの昇温下で還元した。この程度であれば生体組織構造を十分維持できることがわかった。また、市販の無電解Cuめっきによるメタライズを試みた。 上記と並行して、微細構造へのメタライズ条件の最適化を行った。20nm径のアルミナナノホールへ金属を埋め込んだところ、従来の平滑膜作成に適した温度(約180~200℃)よりも高温(250~280℃)ないし低温(<150℃)の両方ので被覆性の向上が確認できた。この結果から、昇温にともなう錯体の溶解度と金属転換の速度のトレードオフにより被覆性・埋め込み性をコントロールできることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.網状生体組織としての葉脈利用:葉の維管束は管束や内部の細胞壁の多次的スケール構造を持っており,超立体構造転写の試みとしてきわめて適した材料である。常緑樹で時期を問わず入手が容易なシイ、ナンテン、サンゴジュ、アオキの葉脈標本をアルカリ脱脂法で作製した。また、超臨界流体流体乾燥、自然乾燥による構造変化、超臨界CO2中昇温による耐熱性を確認した。本件については、計画通り達成した。2.超臨界流体に金属錯体を溶解し,超臨界薄膜堆積法金属錯体による葉脈標本表面の直接メタライズを試みた。180~240℃・10MPaの範囲で、下地が非生体である場合と同様のPt,Cuのメタライズが可能であることを確認した。ただし温度が高すぎる場合には、収縮が観測された。並行して、Cu無電解めっきによるメタライズも行った。導電性が高い被覆が可能であった。以上から、メタライズについては計画通りほぼ完了した。ただし、貴金属錯体注入前処理については未実施であった。3.PDMSによる凹凸構造のネガティブ転写を試行し、プロセスの最適化を行った。葉脈めっき標本のネガティブ転写に適用できるようになた。4.微細構造へのメタライズ条件の最適化は、次年度の実験を前倒しして行った。20nm径のアルミナナノホールへ金属を埋め込んだところ、従来の平滑膜作成に適した温度(約180~200℃)よりも高温(250~280℃)ないし低温(<150℃)の両方ので被覆性の向上が確認できた。この結果から、昇温にともなう錯体の溶解度と金属転換の速度のトレードオフにより被覆性・埋め込み性をコントロールできることがわかった。これは超臨界堆積法では新しい学術的知見であり、期待を大きく上回るものである。以上から、本研究は概ね計画通り推移していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
PDMSを用いて葉脈サンプルへのネガティブ転写を行う。Ptの微細孔を有するPDMS内部にCu錯体を埋め込む。この方法は,前期のCuないしPtメタライズ法で述べたものと概略同一である。この実験段階では,申請者等が開発したフロー方式[J.Electrochem.Soc. vol.156, 2009]を用いる。フロー方式では,原料と添加H2を連続的に長時間供給できるので,所望の厚さつまり様々なスケール構造体に対応した埋込みが可能である。本方式ではH2を低圧のまま安全・確実に添加できる装置を独自開発して用いている[USPat7,651,671, January 26, 2010]。最適堆積条件についてはすでにH23年度において検討済みである。以上により生体の立体網状組織が完全な金属体として絶縁膜内に埋め込むことを実証する。生体のもつ最適ネットワーク解探索能を利用することが最終目標であるが、本研究自体は超立体的な生物構造の転写を目的としている。粘菌の培養への適用可能性を見極め他の生体組織も種々トライしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、計画書に記載した金額を交付予定額で按分した値として予定している。消耗品(有機金属錯体、試薬・ガス・金属材料類、理化学消耗品)に500千円、研究発表・情報収集に約50千円、研究発表・情報収集(外国含む)に250千円、分析費などに100千円を予定している。設備備品の購入予定はないがこれも計画どおりである。
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