2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23656214
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
浅野 秀文 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50262853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植田 研二 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10393737)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 超伝導 / スピン3重項 |
Research Abstract |
平行なスピンを持った電子同士が合成スピンモーメントS =1のスピン三重項電子対を形成した特異な超伝導状態を高温で発現させることを目的とする。このため、今期間中はスピン三重項高温超伝導電子対発現の舞台となる、超伝導体(S)/ハーフメタル(HM)ヘテロ構造の作製のための各要素技術の検討を行った。 S層としては、構造が単純で良好な界面特性が期待できる無限層構造超伝導体Sr0.9La0.1CuO2を用い、HM層の組み合わせの候補材料として、1)強磁性ハーフメタルSr2CrReO6、2)反強磁性ハーフメタルSrLaVMoO6、3)強磁性ハーフメタルFe2CrSi、4)反強磁性Ru2MnGe、5)強誘電体Ba0.7Sr0.3TiO3を用いることとした。まず、それぞれの単一薄膜を格子整合単結晶基板上へ成長させたところ、コヒーレントなエピタキシャル成長が生じ、良好な磁気的・電気的特性が得られることとを明らかにした。 この中で、無限層Sr0.9La0.1CuO2については、基板、バッファーとの格子整合性を精密に制御することで、従来報告されているc軸成長だけでなく、超伝導コヒーレンス長が10倍以上長いため界面制御の観点から積層化に有利な、a軸成長も可能であることを見出した。この結果は、スピン三重項高温超伝導電子対発現のためのヘテロ構造におけるS層として有望であることを意味している。 HM層については、スピン一重項電子対からスピン三重項電子対への変換を支配する界面スピン活性を制御する観点から、上記1)-5)の中から各種組み合わせを検討した。各薄膜の最適成長条件と界面特性を考慮しつつ、ヘテロエピタキシャル成長化を進め、Sr2CrReO6/SrLaVMoO6、Fe2CrSi/Ru2MnGe、およびFe2CrSi/Ba0.7Sr0.3TiO3がHM層の構造として有望であることを見出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究目的の実現に最も重要な、超伝導体(S)/ハーフメタル(HM)ヘテロ構造の作製のための各要素技術の検討については、予定通り研究は進展している。 S層としては、当初計画していた層状ベロブスカイトYBa2Cu3O7やEuBa2Cu3O7ではなく、界面特性制御の観点から構造が単純な無限層構造超伝導体Sr0.9La0.1CuO2を用いることとしたが、超伝導コヒーレンス長が長く積層化に有利なa軸薄膜化にも成功している。 HM層については、効果的なスピン活性制御が可能な、交換結合型強磁性/反強磁性構造であるSr2CrReO6/SrLaVMoO6とFe2CrSi/Ru2MnGeとともに、磁場だけでなく電場による磁気電気(ME)効果を介して界面スピン活性制御が可能な積層マルチフェロイック構造としてFe2CrSi/Ba0.7Sr0.3TiO3が有望であることも見出しており、今後のスピン三重項高温超伝導電子対発現のためのヘテロ構造作製のための基礎検討は完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに得られた知見を元に、スピン三重項高温超伝導電子対発現のための超伝導体(S)/ハーフメタル(HM)ヘテロ構造の作製検討とその接合特性の評価を進める。 S層としては、コヒーレンス長が長く積層化に有利な無限層構造超伝導体Sr0.9La0.1CuO2のa軸成長エピタキシャル薄膜を活用することとする。HM層として、交換結合型強磁性/反強磁性(HM)構造であるSr2CrReO6/SrLaVMoO6とFe2CrSi/Ru2MnGe及び、積層マルチフェロイック(HM/MF)構造であるFe2CrSi/Ba0.7Sr0.3TiO3を検討する。 S/HM/S接合界面に極薄MF層を挿入したS/MF/HM/S積層膜、およびS/MF/HM/MF/S積層膜に対して、微細接合に加工することにより超伝導トンネル型接合とする。ここでは、MF層とHM層の膜厚をパラメータとした系統的な実験を行い、最大ジョセフソン電流の磁場・温度依存性、最大ジョセフソン電流以上の電流を流した時の準粒子トンネル特性、接合常伝導抵抗値と電場の関係、MF層の強誘電特性に依存したME効果の影響等、を評価して、マルチフェロ性と反強磁性ハーフメタル性がスピン三重項電子対の生成に及ぼす効果を考察し、その支配要因を解明することで、純スピン三重項電子対ジョセフソン電流を観測する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究計画を推進するため、超伝導体(S)/ハーフメタル(HM)ヘテロ構造の作製のためのターゲット材料、単結晶基板、素子加工プロセス用材料等に研究費を使用する。また、最終年度であるため、国際会議での発表、論文投稿関係に費用を計上する。
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