2011 Fiscal Year Research-status Report
導電性高分子ナノファイバの3次元的制御形成による有機太陽電池の光電流増強
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23656216
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
山下 兼一 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (00346115)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小滝 雅也 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (00282244)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 高効率太陽光発電材料・素子 / 高分子構造・物性 / ナノ材料 |
Research Abstract |
本研究では、3次元的ナノ構造を有機薄膜内へ制御形成することにより有機太陽電池の性能を劇的に向上させることに挑戦する。光吸収層内において高密度にマトリクス化された導電性高分子ナノファイバとフラーレン誘導体からなる有機半導体のヘテロ構造を作製し、ヘテロ界面の大面積化と光励起キャリアの高捕獲率を両立させる。これにより光電流と変換効率の増大を目指す。初年度は、制御されたナノ構造からなる有機半導体ヘテロ構造を実現することを最大の目的として研究を実施した。p型有機半導体材料としてポリチオフェン誘導体からなる導電性高分子ナノファイバをエレクトロスピニング法によりITO基板上に堆積させた。作製したナノファイバの直径は500-1000nmである。その後、有機溶液を用いた湿式プロセスを詳細に検討し、堆積したナノファイバとフラーレン誘導体とのヘテロ構造を実現した。この混合膜を光吸収層として太陽電池素子を作製したところ、変換効率はまだ小さいが、実際に光起電力効果を確認することができた。ナノファイバの直径、フラーレン誘導体の塗布条件に対する特性変化を詳細に調べたところ、フラーレン誘導体の電気特性が考えられているより良くないことが示唆された。これはバルクヘテロ接合型有機太陽電池の性能向上をはかる上で重要な知見である。また、このフラーレン誘導体の導電性の悪さが原因となり、太陽電池素子の開放電圧と短絡電流にはトレードオフの関係が発生することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも記した通り、ポリチオフェンナノファイバをドナー材料として使用した有機太陽電池素子を実際に作製し、その光起電力効果を確認した。これは、年度当初に予定していた目標事項とほぼ同等であり、おおむね計画通りに研究は進捗していると考えている。その一方で、デバイス表面のラフネスが予想以上であること、アクセプタ材料であるフラーレン誘導体の抵抗率が予想外に大きいことなどが、当初の想定とは別の課題として浮かび上がってきた。しかしながら、これらの課題に対してはファイバの微細化や紡糸膜厚の均一化などで対応できると考えており、今後の研究展開の方向性と基本的には同じであると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
導電性高分子ナノファイバを用いた有機太陽電池素子の高効率化を実現するために、次年度は以下の3つのポイントに注力する。(1)P3HTナノファイバ直径のさらなる微細化:エレクトロスピニング技術を洗練し、100nmオーダー以下のナノファイバの高密度紡糸を実現する。(2)P3HTナノファイバとITO電極との接触抵抗低減:少なからず悪影響性を及ぼしていると思われるので、紡糸後の熱処理プロセスなどの導入を検討する。(3)PPV誘導体を用いたナノファイバの適用:前年度も少し検討しているが、P3HT以外の材料系による光起電力素子の可能性も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請当初に予定していた真空蒸着装置の購入が実際の交付額では不可能であった。そのため、別の手段で入手することができた小型の蒸着装置を転用し、比較的高価である有機太陽電池材料費への比重を増やして初年度の研究は実施した。次年度の研究計画遂行のためには、当初から使用予定の研究費(物品費、旅費、その他)70万円に加え、真空蒸着装置改良のための治具・材料費、並びに今年度の研究に関する成果発表(6月に奈良県で開催の国際会議)のための参加費用を合わせて177万円を使用する予定である。
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