2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23656219
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
斗内 政吉 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 教授 (40207593)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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Keywords | テラヘルツ波 / 強誘電体 / 非線形分光 |
Research Abstract |
本研究の目的は、光による強誘電相の観測および制御である。今年度は主に行った研究の概略について以下に記載する。 先ず、STOの歪み誘起強誘性の観察では、これまでSTOよりも面内の格子定数約1%大きなDyScO_3(DSO)基板上にSTO薄膜を成長させることにより、面内に伸張性の歪みがかかり、室温付近で強誘電性を発現することが知られていた。今回、さらに面内格子定数の大きなMgAl_2O_4基板にSTO薄膜を成長させた。これにより、理想的には約3.5%の伸張性歪みがかかることとなり室温より遙かに高温で強誘電転移する可能性がある。このSTO薄膜をTHz分光法で観察し、強誘電性発現に密接に関係しているソフトフォノンモードの挙動を、測定により得られた誘電分散から解析した。その結果、MAO基板上のSTOは約170Kで強誘電転移していることが明らかになった。また、今回の試料では、強誘電転移した170度以下の温度領域では、低周波における誘電率が単純な調和振動子モデルよりも増大するという現象が見られた。これは、分極ドメインを単位とする配向分極的な振る舞いをしていると考えられる。次に、高強度テラヘルツ波によるSTOの非線形分光計測では、テラヘルツ強度を大きくするに従い、ソフトモードのピークは高周波数側にシフトするいわゆるブルーシフトが起こっていることを見いだした。これは、テラヘルツ波の強電場によるイオン変位により振動モードが調和振動子から外れ非線形な振る舞いをしているためであり、フォノンモードのレーザーによるコヒーレントなコントロールが可能であることを示している。最後に、紫外領域のレーザーを用いたLTEM開発を試みた。これは、標準的なフェムト秒パルスレーザーの3倍波である、波長266nmのレーザー光を用いたテラヘルツ放射・検出システムである。しかしながら、このシステムでは高強度のレーザーが必要であるため、繰り返し周波数を80MHzから1KHzに落とす必要がある。そのため、従来の検出法では十分なSN比で測定できなかった。現在ボックスカー検出器と組み合わせるなどシステムを改良する予定である。
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Research Products
(5 results)