2011 Fiscal Year Research-status Report
GaAsへの希薄窒素デルタドーピングと高効率面放出型光子源の開発
Project/Area Number |
23656222
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
喜多 隆 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10221186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 幸弘 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10554355)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | GaAs / 不純物 / 窒素ペア / 光子放出 |
Research Abstract |
単一光子や量子もつれ光子対は量子通信のエンジンともいわれるほど重要な資源である。現在では自己形成量子ドットなどに励起子を局所空間に閉じ込めることによって理想的な2準位系を作り、光子やスピンにかかわる新しい物性を発現させることが可能である。半導体中の不純物に束縛された励起子のエネルギー状態は不純物固有であり、振動子強度は励起子の数に比例する。また、励起子-キャビティ結合速度が振動子強度の平方根に比例することから、励起子数によってこれまで不可能であった輻射性能の制御が可能になる。本研究ではわれわれが開発したGaAsへの窒素のデルタドーピング技術を利用して2次元配列された窒素束縛励起子を作製し、0.85μm光通信バンドで動作する光子源の開発を目指す。また、マイクロキャビティと融合させて輻射性能を連続的に制御する技術を開発し、高速動作する高効率な面放出型光子源を実現を目指している。 平成23年度は、分子線エピタキシー結晶成長技術を駆使してGaAs(001)α表面にプラズマセルで生成した原子状窒素を吸着させる。窒素添加表面の(3x3)原子オーダリングを利用した高品質で高均一な窒素デルタドーピングを実現を目指した。配列した不純物を用いた新しいコンセプトの量子ドットとしてふるまう配列励起子ナノ構造を作製し、励起子微細構造偏光分離特性基礎光物性を明らかにした。励起子微細構造を制御するために、不純物に加わる結晶場の制御や電場・磁場による交換相互作用の精密制御を実施したところ、均一幅が70マイクロeVであることが明らかになった。この均一幅は観測する窒素ペア数にほとんど依存せず、発光中心のバラツキによる不均一幅が均一幅より小さいことを突き止めた。この成果は、本研究で主題とするスケーリングが実現できることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、振動子強度を窒素ペアの"数"で制御するところが独創的で新しい。窒素ペア数を1~600個まで変えた試料について均一幅を調べたところ、70マイクロeVであることが明らかになった。発光中心のバラツキによる均一幅は実に15マイクロeVであり、観測する窒素ペア数にほとんど依存せず、不均一幅が均一幅より小さくなることを実証できた。この成果は、本研究で主題とするスケーリングが実現できることを示しており、最も要になる技術を確立できた。 本研究で、窒素濃度を変化させて実験していたところ、非常に高い窒素濃度で、窒素間の電子状態の結合効果を明瞭に観測することに成功した。これは当初予期していなかった効果で、デルタ関数的な窒素ペアの電子状態がバンド構造を形成することを示唆しており、来年度のキャビティ効果におけるバンド形成の影響を明らかにすることを新しい発展的な探索に加えたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた成果をもとにして、平成24年度はAlAs/GaAs DBR構造によりQ値を10000程度まで制御したキャビティ構造を作製して、窒素ペアの高均一な電子状態とキャビティフォトンの結合に関わる基礎科学を明らかにし、マイクロキャビティの作製と光子放出特性の詳細な評価を実施する。・さまざまなQ値のキャビティ構造を作製し、励起子-キャビティ結合速度のスケーラビリティーをラビ分裂幅や輻射緩和時間の変化を通じて観測する。・輻射性能の変化を蛍光寿命測定で明らかにする。・研究協力者が有する中性粒子ビームを利用したナノスケールエッチング技術により、サブマイクロメートル径のDBRマイクロポストキャビティを作製する。・ドットからの光子は波数選択則が無いのでキャビティモードと結合させることで指向性指向性のある光子放出を実証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は最終年度であるので、設備備品は購入しない。試料作製の消耗品である、高純度金属、PBNルツボ、真空部品、洗浄用薬品などの消耗品を購入する。また、光学評価に必要になる、レンズやミラーなどの光学部品や温度を変えた実験では不可欠な冷媒(液体窒素や液体ヘリウム)を購入する予定である。
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