2011 Fiscal Year Research-status Report
植物内へのpH制御デバイス挿入による新規成長促進システムの開発
Project/Area Number |
23656235
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
河合 晃 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (00251851)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | MEMS / マイクロマシン / ナノバイオ / 生物・生体工学 |
Research Abstract |
近年、植物工場のように、天候や季節変動に左右されない育成方法が注目されている。本研究課題は、植物内部に代謝制御用の電子デバイスを挿入し、植物電位をコントロールするとともに、親和性の良いpH値をもった溶液を供給することで、植物成長や水分吸収の補助による成長促進を実証することが目的である。H23年度は、以下の研究成果が得られた。まず。茎部分への表皮装着方式でpH値をコントロールし、光合成と同成分であるショ糖の外部吸収を促進できることを確認し、根からの水分補給無しの状態で1か月間の育成に成功している。さらに、植物内部の成長代謝を直接制御できる新たな電子デバイスシステムのプロトタイプを作製した。以下、概要を述べる。1.植物細胞への適合材料の選定ノボラック樹脂の植物表皮への適合性を確認した。特に、植物内部のpH値は6.0~6.5であるため、同等の組織液の浸透性が適合した。また、リソグラフィ技術を用いて、ノボラック樹脂膜をハニカム構造に加工し、内部細胞に適合させる事に成功した。この開口部を有するハニカム構造により、組織液が十分に循環し、かつ強度も確保できる。茎内部への装着には、まず表皮を取り除き、ハニカム構造のノボラック樹脂で被覆した。また、維管束内にデバイスを挿入後にもノボラック樹脂で密封した。2.pHコントロール デバイスの作製と制御リソグラフィ技術を用いて、pH値コントロール部とダイヤフラム型送液ポンプ部を作製した。pH値のコントロールは、電気分解方式により実施した。作製した電子デバイスは、アノードとカソードの2電極構造を有し、組織液の循環可能なマイクロチャネルで構成されている。電気分解必要な電力は、332mJ(24V,15min)であり、バッテリーにより供給した。以上により、育成コントロールの基本デバイス構造の構築できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
順調にデバイス構築が進んでおり、次年度の育成実験の準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
植物にとって親和性の良いpH値をもった溶液を供給することで、植物成長や水分吸収の補助・促進する。そこで、植物内の各部位(根、葉、茎)におけるpH値の勾配を測定し、挿入デバイスのコントロール範囲を明確にする。ショ糖はショ糖-プロトン共輸送体と呼ばれる組織を介して篩細胞へ輸送される。このプロトンの濃度勾配によるエネルギーがショ糖の篩部細胞への輸送の駆動力になっている。事前実験により、観葉植物のポトスの場合、水の流路である木部と、栄養分の流路である篩部が、茎の中央部分で密集して存在し、この流路の密集部分は、茎の外周部と比べてpHが約0.1低いことを確認した。このpHの差によって、栄養分を篩部へ輸送していると考えられる。本研究では、この維管束内でのpH値の制御を挿入デバイスにより行う。さらに、外部制御により植物内の組織液の送液レートを増大させ、成長促進効果を狙う。内圧およびショ糖濃度コントロールに必要な送液可能な流量は、約20μリットル/日であることを実験で確認している。市販のマイクロポンプでは、制御不可能な微小流量であるため、本研究では、ダイヤフラム型のマイクロポンプを用いて植物内へ溶液を導入する。この際、恒温槽を用いて、供給溶液の温度管理を行う。マイクロポンプは液体との接触部は高分子材料で構成されているため、植物細胞への適合性はクリアしている。平成24年度の1年間に、様々な食用および観葉植物および種子について、デバイス挿入実験を実施する。デバイスを内部に挿入し、ショ糖の導入および組織液の加圧を実施する。これらの人為的な刺激による育成実績により、種子を取りだし、新品種の確保を狙う。研究期間の最後には、本研究の総括を行い、さらなる実用化への発展を積極的に推進する。以上について、得られた結果の取りまとめと成果発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
植物育成実験に必要な観察機器、消耗品、および資料調査に使用する予定である。
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