2011 Fiscal Year Research-status Report
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23656244
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
林 健司 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 教授 (50202263)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 分子ワイア / センサ / モット転移 / 分子認識 |
Research Abstract |
本研究の目的は低次元有機導電体のモット-ハバード転移に基づいたセンシングFET(MT-FET)を創成することにある.化学物質検出する強力なセンサ系は化学物質情報をディジタル化する情報エレクトロニクスのキーデバイスであり,電子デバイスとして汎用性が高いセンサの検出原理を確立することは高い意義がある.本研究は広く研究されている導電性有機材料をセンサトランスデューサとする化学センサの一般化を進め,モット-ハバード転移によって生物の受容タンパク質系のように化学物質により動作するスイッチとしてセンサの原理設計を行ない,化学センサデバイスの検知性能を飛躍的に高めることを目的とする.本年度は,配向性ナノファイバ電極の微細化による導電性チャネルの低次元化を進めた.配向性ナノファイバはポリアニリンのin situ合成と電極表面特性の制御によって実現し,ネットワーク状のナノファイバを作製した.作成電極によるFET特性を測定し,その制御を試みたが,ドレイン-ソース電極構造に問題があり,明確なFET特性を得るまでには至らなかった.一方で,P3HTとペンタセンを導電材料に用いた有機FETを作成し,そこに分子認識部位を結合させた素子については明瞭なFET特性と化学物質応答性を確認した.分子認識部位にはアルデヒド類と電荷移動相互作用を行うDNPH,および包接化合物であるカリックスアレーンを用いた.これらのホスト分子をチャネル層に微量に添加することで有機導電体の構造が乱れ,FET特性が変化し,ホスト分子の変化によりチャネル層の導電性が変化するというメカニズムが予想される.実際,ホスト分子と相互作用する物質のガス雰囲気下に置くことにより,選択性を持つFET特性,ないしは導電性変化を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とする低次元導電チャネルを持つFET型センサと分子認識を行うホスト化合物のカップリング,およびその選択的な化学物質応答について,センシングデバイスとしての性能は不十分ながらも原理的な動作確認を行い,ホスト化合物が選択的に検知する化学物質の吸着が導電チャネル層に影響するデバイス作成に成功した.このため,所期の目標はおおむね達成したと判断する.しかし,FETのチャネル層の導電性変化メカニズム,ホスト分子と導電層のカップリングの詳細が明確化されていない点は今後の課題であり,その点では研究の到達度は不十分である.一方で複数の異なるホスト化合物のチャネル層への導入が可能となった点は,センサデバイスの開発としては今年度に予定した以上の成果となっており,総合しておおむね順調に進展していると自己評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究では低次元導電性有機材料の導電性変化,およびFET特性変化がモット-ハバード転移をメカニズムとしているかどうかは明確にはできなかったため,引き続きデバイス作成とその動作測定を詳細化し,本研究の目指す低次元レイア構造のスイッチ的な動作を実現する.モット-ハバード転移を導電性変化機構とする導電性チャネルをFETのチャネルとしたMT-FETを作製する.電極構造はボトムコンタクト型として,ドレイン電流特性などのFETの基本特性を確認し,有機FETデバイスとする.既に初年度でセンシング有機FETデバイスに関しては,センシングデバイスとしての応用を実現しているが,モット-ハバード転移を伴うチャネル形成は未踏領域であり,実現のためにデバイス化を実現する.また,チャネル層として分子ワイア,あるいはナノワイア構造をより明確化し,チャネルの低次元化とホスト化合物のカップリング方式,カップリング原理について検討する.本年度のホスト化合物に加え,シクロデキストリンやペプチドなどの分子抱接型のホスト化合物も用い,分子ワイアを修飾し,分子認識能を持った表面を形成する.このようなインピーダンス変化型の単純なセンシングデバイスの基本特性を測定し,このホスト化合物を分子ワイアの導電性が電子相関によってカップリングすることを確認し,さらに,モット-ハバード転移に影響を与え,高感度化できることを調べる.特に,導電層とカップリングするホスト分子とのカップリングとセンシングによる変化については,素子構造をナノ構造とすることで,そのメカニズムを明らかとする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画としては,デバイス作成のための機能性材料や試薬類,デバイス作成装置消耗品類,測定対象となる化学物質,研究成果の学会発表のための旅費と参加費,およびデバイスの機能性部位の表面分析や組成分析費用に用いる.また,必要に応じて実験補助のための謝金を支払う.
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Research Products
(2 results)