2012 Fiscal Year Research-status Report
アルゴリズムモデルに基づくダイナミカルシステムの解析・設計法の開発
Project/Area Number |
23656271
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
黒江 康明 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (10153397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯間 等 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (70273547)
森 禎弘 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (40273544)
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Keywords | ダイナミカルシステム / 解析・設計 / システムモデル / アルゴリズム / シミュレータ / ハイブリッドシステム / カオスシステム |
Research Abstract |
最近のシミュレーション技術の著しい発展により、ありとあらゆるシステムの計算機シミュレーションが可能となってきている。本研究の目的は、この事実に着目し、シミュレータを対象システムのモデル、すなわちアルゴリズムで表されたモデルとして捉え、これを対象としてダイナミカルシステムを解析、設計する方法を開発することである。 従来の解析、設計におけるモデリングは二つの段階がある。第1段階は出来るだけ現実のシステムに忠実な比較的複雑なモデルで,これはシミュレータの開発に用いられる。また、第2段階は解析・設計に用いることができるようさらに理想化、簡単化されたモデルである。本研究において、最初から第1段階のモデルを対象とするのは非常に困難であると予想されるので、今年度も昨年度に引き続き、まず簡単なモデルである第2段階を対象とし研究をすすめた。すなわち、これまでダイナミカルシステムの第2段階の数学モデルに対して開発されてきた解析・設計法に対し、シミュレータをアルゴリズムモデルとみなした場合に、それらの方法を、直接、計算機アルゴリズムとして解析・設計法を実現する方法の基礎的な検討を行うとともに、この方法論の第1段階のモデルへ展開を検討した。具体的には、ハイブリッドシステムとしてモデル化できるパワーエレクトロニクスシステムと遺伝子ネットワーク、およびカオスシステムなどを対象とし、その解析・設計法を検討した。特にカオスシステムに対しては、カオス状態を安定化するための制御器の設計アルゴリズムを導出する方法を検討し、このアルゴリズムが第1段階のモデルにも適用できる方法であることを確認した。 一方、モデルを用いずにシステムを設計する方法の検討も行った。具体的には強化学習の考え方を導入した制御系の設計法の開発である。実際にこの方法を用いてシミュレータを対象としてロボットの制御系が設計できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度に引き続き、まず従来解析、設計に用いられてきた数学モデルである第2段階の簡単な数学モデルを対象として、その解析と設計法を直接導く方法を検討した。またいくつかのシステムのいくつかの解析、設計問題に対して、それらの方法をアルゴリズムとして導いた。導いた方法は、従来の第2段階の数学モデルに基づいて導く方法では導けない解析、設計法も含んでおり、より拡張性、汎用性の高い方法になっていることが確認できている。またモデルを用いないシステムの設計法として、強化学習の考え方を導入したシステムの設計法の検討も行った。このアプローチは当初の研究計画にはなかったものであるが、これまでの本研究のアプローチの相補的なアプローチとして位置づけられる。これらの二つのアプローチにより研究を進めることにより、本来の目的である第1段階の数学モデル、およびシミュレータすなわちアルゴリズムモデルを対象とした解析、設計法の開発に進んでいけるものと考えられる。 以上のことより、本研究はおおむね予定通り進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の成果をもとにして、これまでハイブリッドおよび非線形ダイナミカルシステムの第2段階の数学モデルで開発されてきた解析、設計法を、シミュレータで用いられている第1段階の数学モデルに対して適用するための方法の検討を本格化する。さらに対象システムの第1段階の数学モデルに対して、従来開発されてきた解析・設計法が適用できるよう、解析・設計法を拡張する。またモデルを用いない強化学習の考え方を導入したシステムの設計法の検討もさらに進める。先に述べたようにこのモデルフリーのアプローチは、これまでのアプローチの相補的なアプローチとして位置づけられ、シミュレータだけを用いた学習による設計法から、アルゴリズムモデルに基づく設計法を導く方法を探る。 さらに以上の2つのアプローチの成果をもとに、シミュレータで使われる第1段階のモデルに対する解析、設計法を具体的に計算機アルゴリズムとして開発する方法を研究する。また取り扱うシステムの対象も徐々に広げ、一般のハイブリッドダイナミカルシステムを扱えるように検討する。また、この時どのような解析、設計の問題を扱うかが問題となるが、当面は、安定解析法、このステム特有の問題である動作モード解析法、および制御系の設計法に焦点をしぼり、そのための解析、設計アルゴリズムを導く方法を検討する。その上で、導いたアルゴリズムが第2段階の数学モデルをもとに開発された方法が取り扱うことができなかったモデルの特性が扱えるようになることを示す。すなわちシミュレータで用いている第1段階のモデルの振る舞いを完全に考慮した解析、設計が行えることを示す。 以上のようにすすめた研究の成果より得られた知見をもとにして、ダイナミカルシステムのアルゴリズムモデルから解析・設計するための方法を、アルゴリズムとして直接導くための方法論を一般化する道筋を示し、本萌芽研究を完成させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の目的は、アルゴリズムモデルに基づいてダイナミカルシステムを解析、設計するための方法を開発することである。これを遂行するためには適切な計算機とソフトウエアの導入が不可欠となり、このために今年度は予定していた計算機を一部導入した。すべて導入しなかったのは、当面はこの計算機および現有の計算機とソフトウエアを用いて研究を遂行することが可能であることが分ったためである。また、研究をより発展させるため、より高機能な計算機とソフトウエアを導入することが望ましく、そのためには今年度すべて導入するより、よりバージョンアップされた計算機とソフトウエアを次年度に導入する方が、研究遂行上、また予算の有効使用の観点から良いとの判断に至ったからである。そのためその相当額を次年度に繰り越すことにする。次年度では、予定していた予算に繰越金を加え、バージョンアップされた計算機を導入するとともに、研究成果の発表、研究動向調査、資料収集のための国内旅費、海外旅費、資料整理のための謝金などとして研究費を使用する予定である。
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