2011 Fiscal Year Research-status Report
車両応答計測を利用した一般ユーザー参加型の世界の道路台帳整備
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23656287
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長山 智則 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80451798)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 路面性状 / 加速度応答 / GPS / 維持管理 |
Research Abstract |
道路の維持管理費が限られる中,路面性状を把握して効率的に管理・運用することが不可欠である.研究代表者らは車両応答型簡易路面性状検査システム(VIMS)を開発してきたが,データ処理が複雑,特定の試験条件(走行速度,センサ位置等)が規定されるなどの理由で広く利用されてはいない.より簡易で誰でも利用できるシステムが求められる.一方,センサ搭載のスマートフォンやクラウドコンピューティング技術が普及し,計測やデータ管理が容易になっている.これら技術を利用し,また試験条件緩和に向けた研究を進めることで,専門知識を持たない道路管理者や一般ユーザでもどこでも自らの車で簡単に路面性状把握できるシステムを構築する.実現すれば世界の道路路面性状を分散的効率的に把握できる. 平成23年度はシステム構築に向けた要素研究を行った.まず,VIMSで前提としていた計測条件を緩和するため,走行速度の違いのキャリブレーション方法を改良した.これまでは定速走行が前提であったが,評価区間ごとに平均走行速度を算出し,それに応じた路面性状推定を行うことで任意速度での自由走行データを用いて路面状態を判断できるようになった.更に,一般車が普通走行する場合複数の走行レーンのいずれを走行するかにより,推定される路面性状も異なるため,高精度GPSを用いて走行レーンの違いを認識できるか評価を行った.追い越しなどで走行レーンが変化する場合にGPSデータからこれを検知できることを確認した.次に,スマートフォンを利用して,加速度,角速度,動画,GPSデータを同時に取得するアプリを開発した.これらを利用して国内外で試験走行をすることで,自由走行からの路面性状評価とスマートフォン計測アプリの評価を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では平成23年度は次の3項目を予定していた.1)VIMSの計測条件の緩和,2)加速度および緯度経度計測アプリの開発,3)クラウドデータ処理システムの構築. 1)は,一般車両の走行データは,様々な走行条件(車両,速度,センサ位置の違い)における車両応答を含むため,これら走行条件の違いを適切にキャリブレーションし路面性状把握することを予定していた.特に,速度の違いに着目し,任意速度の自由走行データを分析する手法を提案し,国内外の実道路の走行データを用いて手法の妥当性を示した.予め1つの路線を4,5の異なる速度で定速走行し,車両応答を収録・分析しておけば,それを用いて任意速度の応答をキャリブレーションできることが明らかになった.一方で,車両の違い,センサ位置の違いについては結論を得るには至らなかった. 2)はIphoneを利用して,加速度,角速度,GPS情報,動画を同時収録可能なシステムを構築した.当初想定をしていた計測精度,サンプリング時間精度は実現できなかったものの,車両応答が大きな10Hz程度までの成分については計測可能なことを明らかにした. 3)はスマートフォンからのデータを受け取り,路面性状に変換するデータ処理をサーバー上に実装する予定でいたが,今年度はデータを転送し,サーバー上に保存する機能のみ実現した.データ処理はサーバーからPCにダウンロードした上で実行している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,平成23年度に完了しなかった課題および新たに明らかとなった問題を解決するとともに,当初の予定通り,クラウドデータ処理システムの構築と試験運用を行う. まず,VIMS計測条件緩和の中で,センサ位置について検討を行う.これまで加速度応答を利用して路面性状推定を行なってきたが,加速度はセンサ設置位置により応答が異なる.一方で角速度は車両内の設置位置によらず一定であると考えられる.角速度を利用して社内の任意位置で応答を計測し,路面性状推定を行う. 次に,23年度の研究から,車両応答には大きな非線形性があり,路面性状が特に劣悪な道路や,30km/h以下の低速で走行した場合,100km/h超の高速で走行した場合にその影響が無視できないことがわかってきた.そこで,車両の非線形性をシミュレーションと実測データの比較を通じて行う.より現実に近い非線形モデルを構築し,非線形性も考慮した上で計測条件の違いを補正する.また,大きな車両応答の原因が,ポットホールなど舗装の問題であることと,ジョイントなど構造物の問題であることがあるが,これらを区別するために,スマートフォンアプリの動画撮影機能を利用し,画像解析から車両応答の原因を究明することとを試みる. 更に,構築してきたスマートフォン,サーバーの仕組みを活用し,多くの走行データを集め,統計的に分析を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
車両の非線形性解析,およびセンサ位置の検討のため,実道路での走行試験を予定している.多量の応答データ,動画データが含まれることから,大容量外部記憶装置の開発を予定している.また,MATLABCoder, Compilerなどの開発ツールを購入し,Webサーバー上でのデータ処理を簡易に実現する.さらにケニア/タンザニアで,長距離に渡り路面性状調査をする機会が得られたため,開発しているシステムを用いた計測を行う.計測と国際学会発表のための旅費支出を予定している. その他,サーバー維持管理費などのための通信費の支出も計上している.
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