2011 Fiscal Year Research-status Report
橋梁ヘルスモニタリングのための革新的損傷検知手法の開発と実証
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23656290
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
宮本 文穂 山口大学, 理工学研究科, 教授 (10093535)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 長寿命化 / モニタリング / 解析・評価 / ノンパラメトリック状態式 / 損傷検知 |
Research Abstract |
本研究では、橋梁などに生じる損傷検知法の論理展開とその体系化のアイデアを、種々提案されている従来法の実用性の面からの比較を精査するとともに、新たに提案するノンパラメトリック手法の定式化、解法の手順などをフィンランド研究者と綿密に議論した。これに基づいて、既に先行的に検討してきたお互いの数学的展開アイディアを持ち寄り、数値検証を実行した。また、両機関で有している模型橋梁および実橋梁の両方を利用したヘルスモニタリングシステムに改良を加えて組込んだ。本年度は以下に示す結果を得た:1.原理の確立:ノンパラメトリック方式でシステム状態を表現する新しい手法の原理を確立した。すなわち、システムの状態を状態変数として状態方程式で表わし、カーネル関数方法と大型線形拘束問題の解に統計的手法を適用した状態評価計算法と評価指数を提案、確立した。2.ツール化1:一般的な拘束条件の下で、多項式~時間問題の高性能で効率のよい計算手法の考案しツール化した。例えば、ヒルベルトマトリクス問題のような極端に非論理的な条件においても、十分有効となるような革新的なツールを提供出来るようになった。3.ツール化2:新しい時間周波数解析のツールとして、原信号は周波数スライス関数を適用する手法(FSWT)を提案した。これは、従来のウェーブレット変換に比べて多くの有利な特性を有することを明らかにした。4.特徴抽出および状態評価手法の確立:ランダム減衰技術と統計的推定法の組み合わせを応用して、モード分離と減衰特性識別に高精度推定の周波数スライス計算法を確立した。この結果を利用し、既存の橋梁模型の加速度波形に適用して実証実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,既存橋梁部材に発生する各種の損傷と振動特性に着目したこれまでに無い新しい損傷検知手法を確立するための基礎概念の確立と理論体系の展開を行った。すなわち、大量に収集されるモニタリングデータの処理に適した時間~周波数解析手法の一つである"Frequency Slice Wavelet Transform(FSWT)"と呼ぶ解析手法を提案し、これによって得られる解析結果に"Modal Damping Function(MDF)"を適用することで振幅の包絡線の係数を抽出し、特徴ベクトルを構成する.このように、抽出、構成した特徴ベクトルを利用して新たな損傷検知手法である"State Representation Methodology(SRM)"を提案、確立した。また、本手法を検証するために既知の損傷を導入した橋梁模型桁を用いたインパクトハンマー試験および移動荷重実験の2つの室内実験を実施し、その有用性を確認した。 以上の成果を国内外の研究集会で発表した結果、高い評価が得られ、次年度に山口大学において国際研究集会の開催を予定するに至っている。 上述のような理由により、本研究のこれまでの達成度は、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で論理展開とその体系化を完了した解法、ツールなどを統合してシステム化するとともに、人工的な損傷を導入した模型橋梁を利用した実用化のための実証実験を繰り返す。具体的な項目は以下に示す通りである:1.論理検証および実証実験の実行:数値シミュレーションによる解析結果を図表化して提案手法の全体的なロジックの最終検証を行う。また、人工的な損傷を導入できる橋梁模型を利用した綿密な室内実験を繰り返して実施し、本提案手法で新たに開発したカーネル関数法、多スケール概念、FSWTおよび統計確率検証法を組み合わせた橋梁の状態評価を妥当性、精度、安定性などを明らかにする。2.実用化の検討:2年間にわたる研究成果を、日本およびフィンランド両国の模型橋梁、実橋梁に適用して実用化のための各種検証試験を行い、国内外での利用を促進するとともに、国際会議などを開催して広く普及していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度にあたる本年度は、初年度の研究成果を国際会議で発表するとともに、共同研究者とさらに議論を深めるために、2回の「成果発表および研究打合せ」旅費に使用する予定である。また、研究成果を国際雑誌などに掲載するための投稿料にも使用する予定である。 なお、次年度使用額が生じた状況(理由)は、3月末(年度末)に参加したギリシャでの国際会議への旅費、宿泊費などの見積りを、ユーロ通貨が不安定に為替変動したために少し余裕を持って対応したことによる。
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Research Products
(6 results)