2011 Fiscal Year Research-status Report
泥質干潟に生息する潜泥性二枚貝の地盤工学的アプローチによる生息場評価
Project/Area Number |
23656301
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
末次 大輔 佐賀大学, 低平地沿岸海域研究センター, 准教授 (30423619)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 弘行 佐賀大学, 低平地沿岸海域研究センター, 研究員 (00588709)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 干潟 / 二枚貝 / 生息場評価 |
Research Abstract |
本研究では有明海湾奥の泥質干潟に生息するアゲマキを対象として,アゲマキの生息に適した干潟環境を明らかにする.今年度はアゲマキの干潟土中での活動の様子を観察する実験を行った.アゲマキの運動を観察できるように,ゼラチンならびに寒天を使って半透明の模型干潟を作製した.模型干潟地盤にアゲマキを放置し,運動する様子をデジタルカメラで撮影しながら観察した.アゲマキの潜行運動を観察するためには,ゼラチンならびに寒天はアゲマキが潜行できるように,固体の状態ではなく粉砕して使用すればよいことが判明した.アゲマキの場合には,ゼラチンよりも寒天で作製した模型干潟の方が良く運動するようである.アゲマキの土中潜行の方法は以下のとおりである.模型干潟に寝かした状態で放置したアゲマキは地表面に向けて斧足を伸ばし貫入させる.土中に貫入させた斧足の先端を傘状に広げて固定し,斧足を縮めることによって体を土中に引き込む.その後も同様な行為を繰り返して体を垂直に起こしながら土中に潜行する.また,一連のアゲマキの潜行運動ならびにその際の模型干潟土の挙動を観察した結果,アゲマキが潜行するためには,干潟土は斧足を貫入できる程度の軟らかさのみではなく,斧足の先端を土中で広げ,自身の体を斧足を収縮させて引き込むための反力を確保できる適切な強度を有する必要があると推察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度には土中におけるアゲマキの潜行運動ならびにその際の干潟土の挙動を観察し,アゲマキの生息場として干潟土に必要な性質について考察を行った.初年度の研究計画をほぼ実施できていることから,おおむね順調に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
干潟土の含水比,砂分含有量を変化させて,干潟土の物理条件の違いがアゲマキの生息に及ぼす影響を模型実験により明らかにする.含水比の条件は,海水中での自重圧密状態(300%)から浮遊幼生着底底質(人工種苗生産時)の含水比(120%)まで変化させる.砂分含有量の条件は,含水比230%(深度30cm の平均値)に調整した干潟底質に対して,アゲマキ養殖時の覆砂量,ならびに放流場所の調査結果から,体積比で0,10,20,50%とする.直径30cm,高さ150cm のアクリル製カラムを使って所定の条件の模型干潟を作製する.次に,アゲマキを放流し餌を与えない条件で現場海域の潮汐を再現した水位を与えながら生息させ,その様子を観察する.観察期間中にはアゲマキの生息孔での昇降運動量を測定する.観察終了後,アゲマキを採り上げ,剥き身湿重量等を計測する.そして,アゲマキが生息した模型干潟土のせん断強さ,アゲマキに作用した周面摩擦力,ならびに不撹乱試料を採取して底質の密度,含水比,粒度を測定する.一連の模型実験から得られる模型干潟底質の物理的・力学的性質,アゲマキの運動ならびに肥満度等の生体応答により,アゲマキに適した生息環境について考察する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は実験,分析等に必要な備品,消耗品,実験試料を購入する.研究情報の収集ならびに研究成果を学会で発表するために必要な旅費を支出する.研究補助する大学院生への謝金を支出する.
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