2012 Fiscal Year Annual Research Report
泥質干潟に生息する潜泥性二枚貝の地盤工学的アプローチによる生息場評価
Project/Area Number |
23656301
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
末次 大輔 佐賀大学, 低平地沿岸海域研究センター, 准教授 (30423619)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 弘行 山口大学, 理工学研究科, 助教 (00588709)
|
Keywords | 泥質干潟 / 二枚貝 / 地盤環境 |
Research Abstract |
本研究では有明海湾奥の泥質干潟に生息する潜泥性二枚貝のアゲマキを対象として,アゲマキの生息に適した干潟環境を地盤工学的な観点より明らかにすることを目的とする。まず,寒天を使って半透明の模型干潟を作製し,干潟地盤内部でのアゲマキの潜行方法を観察した。アゲマキは次の方法で潜行するすることがわかった。模型干潟地盤表面に寝かした状態で放置したアゲマキは下方に向けて斧足を伸ばし地盤に貫入させる。地盤に貫入させた斧足の先端を傘状に広げて側方の地盤中に貫入・固定し,斧足を一気に縮めることによって体を地盤中に引き込む。その後も体を垂直に起こしながら,同様な行為を繰り返して地盤中に潜行する。また,アゲマキは地下水位の低下に追従して潜行する性質を持つことも判明した。次に,干潟から採取した粘性土と市販の砂質土を用いて,円筒形のモールド内に作製し,模型干潟にアゲマキを放流して,アゲマキの潜泥行動と干潟地盤の状態との関係について検討した。模型干潟のせん断強さは砂質土の混合量を変えて変化させた。模型干潟には,干出時間が6時間となるように,1周期12時間のsin波で潮位変動を7日間与えた。一連の実験結果より,砂分含有率30%,せん断強さ1kPa程度の干潟地盤の条件で斃死する個体は1つもなく,更に潜行深度も最も大きい結果となった。 アゲマキの潜行運動ならびにその際の模型干潟地盤の挙動の観察より,泥質干潟地盤においてアゲマキが生息できる地盤の条件は,斧足を貫入できる程度の軟らかさのみではなく,斧足の先端を土中で広げ斧足を収縮させて自身の体を引き込むための反力を確保できる適切な強さを有する必要がある。本研究で得られた成果は,悪化した泥質干潟における二枚貝の生息場の修復の方法,ならびにアゲマキの養殖場造成の設計・管理法の確立に寄与できる知見である。
|
Research Products
(6 results)