2011 Fiscal Year Research-status Report
微分干渉顕微鏡を用いた微生物周りの3次元流れ場計測法の開発
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23656308
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
竹原 幸生 近畿大学, 理工学部, 教授 (50216933)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 3次元流れ場計測 / 微分干渉顕微鏡 / 画像計測 |
Research Abstract |
本研究では微分干渉顕微鏡を用いた微生物周りの3次元流れ場の画像計測法の開発を行っている。当該年度の研究実績は以下のとおりである。 まず,微分干渉顕微鏡下でのトレーサー粒子のピント面からのズレによる粒子画像の特徴変化から奥行き方向の位置を定量的に計測する手法の開発を行った。実験では0.9ミクロンのプラスチック製のトレーサー粒子をプレパラート上に固定し,対物レンズを上下方向に2ミクロンずつ移動させることによりピンぼけ画像の特徴を観察した。その結果,ピント面からずれることにより粒子中心に対してリング状の画像が現れ広がっていくこと,および粒子がピント面より上方にある場合は周囲より中心輝度が大きくなり,ピント面より下にある場合は周囲より中心輝度が小さくなるという特徴から粒子奥行き位置の計測が可能であることを分かった。実験より求めた推定式により0.5μm程度の精度計測が可能であることが分かった。また,同時に光学シミュレーションによりピントのズレにより同様な粒子像になることを確認した。 微分干渉顕微鏡下の流れ場画像計測では通常のビデオカメラでの撮影ではフレームレートが遅く,高速ビデオカメラが必要となる。今回現有の100万fpsの高速ビデオカメラを微分干渉顕微鏡に設置できるように改良を加えた。 また,顕微鏡下における計測のためのマイクロチャネルについて検討を行った。使用するマイクロチャネル材料としてPDMAを選び,幅500ミクロン,深さ100ミクロンの水路を用いて流れの計測に関する予備実験を行った。高速ビデオカメラを用いるため,光量不足が問題となったが,高速ビデオカメラ用の長閃光時間ストロボを用いてクリアできることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,(1) 微分干渉顕微鏡下によるトレーサー粒子のピント面からのずれによる粒子画像の特徴抽出,(2)トレーサー粒子の輝度分布の変化を予測する光学的なシミュレーションの開発のための基礎的なアルゴリズムの検討,(3)開発した手法の3次元流れ場の計測への適用検証用マイクロチャネルの作成,(4)水中微生物の飼育法の準備,の4項目について行なう予定となっていた。(1)に関しては既に画像の特徴抽出を行い,さらに画像処理によりその特徴量の抽出手法を開発した。また,それらの特徴量を用いて奥行き位置を推定する予測式を求めた。よって,この項目に関しては十分に達成できたと思われる。(2)に関しても現有する微分干渉顕微鏡の光学系を模擬して光学シミュレーションを行い,実験結果と同様の結果を得た。このことより,この項目に関しても概ね順調に進行していると思われる。(3)に関してはPDMS(ポリジメチルシロキサン)を水路素材としたマイクロチャネルを試作した。予備実験として,高速ビデオカメラと作成したマイクロチャネルを用いて2次元流れ場の画像計測を行った。問題点を洗い出し,解決方法を検討した。よってこの項目に関しても概ね順調に進行している。(4)に関しては微生物飼育のための器機を準備した。また,実験に用いる微生物の選定を行なった。この項目に関してはやや遅れ気味であるが,次年度当初にも微生物の飼育を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究室で現有する画像計測技術と今回開発した計測技術により,微分干渉顕微鏡下の3次元流れ場に関する各要素は準備できており,次年度はそれらの各要素技術の統合を行い,実際の計測を行う。よって本年度は以下のような項目について研究を行う。(1)各要素技術の統合:これまで現有の高速ビデオカメラおよび微分干渉顕微鏡を用いて微分干渉顕微鏡下での3 次元流れ場計測法をマイクロチャネル内の流れ場計測へ適用し,その計測精度を調べる。特に,マイクロチャネル内の流れ場はレイノルズ数が小さく,層流となる,この場合,予め流速分布が求められるため,粒子位置と流速の関係が分かっており,精度検証用として用いることができる。計測には高速ビデオカメラを用いる必要がある。高速ビデオカメラの設置位置は顕微鏡の上部であり,高速ビデオカメラの重量の関係上,型枠を作成し,実験を行う。(2)微生物周りの3 次元流れ場計測への適用可能性の検討:計測対象とする微生物の挙動を微分干渉顕微鏡により詳細に観察する。クリプトモナスはある瞬間に体内の水をジェットとして対外に噴出することにより移動する。この挙動を高速ビデオカメラで撮影する場合,何らかのトリガーが必要になる。クリプトモナスの運動を制御するのは困難であるため,画像中の変化をトリガーとするような画像トリガーが必要となる。画像信号をモニタリングしながら,信号に変化が生じたときにトリガー信号を発生させる装置の実用化を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
微分干渉顕微鏡と高速ビデオカメラを組み合わせた観測システムの整備を行なう。特に予備実験により明らかとなった光量不足を解決するための長閃光時間ストロボを組み込むための光学機器の整備のための器機の作製を行なう。 マイクロチャネルを用いた流れ場計測のために必要な材料および実験に必要な薬品等を準備する。 微生物回りの流れ場計測への適用可能性を検討するため,微生物の入手および飼育を行なう。 その他,顕微鏡下の流れ場計測関する情報および微生物に関する情報収集のための旅費や画像処理等のための消耗品を購入する。
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