2012 Fiscal Year Research-status Report
生物多様性オフセットの導入を見据えた公共事業のマネジメント・プロセスの再検討
Project/Area Number |
23656311
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福本 潤也 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (30323447)
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Keywords | 公共事業 / 生物多様性 / 戦略的環境アセスメント / 生物多様性オフセット / 土地利用制度 / 土地税制 |
Research Abstract |
オフセット制度の日本への導入を念頭に置きながら,オフセット制度の導入がステークホルダーに与えるインセンティブと土地利用に与える影響について,理論分析と実証分析を行った. 理論分析では,土地利用規制が厳格でオフセット制度が導入されているドイツの制度と,土地利用規制が緩くオフセット制度が導入されていない日本の制度の違いを明らかにするため,動学的な土地利用モデルを定式化して,土地利用規制の厳格さやオフセット制度の有無が都市内土地利用や都市規模に長期的に与える影響について分析した.分析結果として,土地利用規制が緩いままオフセット制度を導入すると,土地利用の長期的な効率性の低下や生物多様性の低下をもたらす可能性があることを示した. 実証分析では,土地保有者が農地から市街地へと土地を転用する行動を,土地保有者の動学的最適化行動として表現した上で,千葉県北西部と茨城県南西部の市町村の過去30年間の土地利用変化データ(より正確には,細密数値情報(10mメッシュ土地利用)と数値地図5000(土地利用)のデータ)を用いて,土地転用モデルを実証的に推計した.さらに,推計結果を用いて,土地税制や土地利用制度が土地所有者の土地転用インセンティブに与える影響を定量化した.分析結果から,地価の高低が土地転用行動に与える影響が決定的に大きく,オフセット制度の導入が土地利用変化に与える影響も都市内で大きく異なることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では研究目的として,「公共事業のマネジメント・プロセスの全面的な見直しを余儀なくする生物多様性オフセットの導入という将来の可能性に着目し,公共事業のマネジメント・プロセス全体のあり方について検討する.具体的には,日本への導入が望ましい生物多様性オフセットの代替案を設定・提案し,経済実験を通じて提案制度の有効性を検証する」と記した.このうち,日本への導入が望ましい生物多様性オフセットの代替案の設定・提案については,先進的なドイツの制度との比較を通じて研究目的をほぼ達成できた.また,土地税制や土地利用制度が土地所有者の土地転用インセンティブに与える影響を定量化する分析でも有益な研究成果を得ることができた.一方,経済実験を通じて提案制度の有効性を検証する部分については,実験設計に問題があり,十分な分析を行うことができなかった.以上より,(2)おおむね順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
生物多様性の保全と公共事業のマネジメント・プロセスを検討する上で土地制度が重要な役割を持っている.土地制度が生物多様性の保全や公共事業のマネジメントに与える影響について実証分析を蓄積することが今後の研究の推進方策として大変有益であると考えている.現時点では,平成25年度の研究で構築した土地利用モデルの進展させることを今後の研究の一番の推進方策として考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度までの研究成果をまとめて,学会成果発表や学術雑誌への投稿を行っていく.
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