2013 Fiscal Year Annual Research Report
生物多様性オフセットの導入を見据えた公共事業のマネジメント・プロセスの再検討
Project/Area Number |
23656311
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福本 潤也 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (30323447)
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Keywords | 公共事業 / 生物多様性 / 戦略的環境アセスメント / 生物多様性オフセット / 土地利用制度 / 土地税制 |
Research Abstract |
期間延長した最終年度には,以下の2つを実施した.第一に,前年度までの理論分析の分析結果を拡張して研究成果として取りまとめ,学術雑誌に投稿した.前年度の分析結果として,土地利用規制が緩い状況下でオフサイトでの代償義務を導入すると土地利用の長期的な効率性や社会的厚生の低下をもたらす可能性があることを明らかにした.一方,今年度の分析結果として,同じ状況下でもオンサイトでの代償義務を導入すると土地利用の長期的な効率性は保証されないものの生物多様性の低下にはつながらないことを明らかにした.第二に,土地制度が都市内土地利用に与える影響について,前年度に実施した実証分析の成果を拡張し,農地制度が都市内生物多様性に与える影響について実証分析を行った.具体的には,1991年の農地制度改正が13種類の環境指標生物の生息確率に与えた影響を定量化した.分析結果として,宅地並み課税の強化が宅地転用と生物多様性の低下をもたらした一方で,生産緑地制度の見直しが農地保全と生物多様性の保全をもたらしたことを明らかにした. 研究期間全体を通じた成果は大きく以下の2つある.第一に,日本への導入が望ましい生物多様性オフセット制度と公共事業のマネジメント・プロセスについて,ドイツ制度との比較分析と都市経済分析により検討した.生物多様性の保全への関心が高まる中,開発と保全を両立する仕組みとして生物多様性オフセットに対する関心が高まっている.本研究では,現行制度を維持したままオフセットの仕組みを導入すると,むしろ社会的厚生の低下を引き起こす危険性があることを明らかにした.第二に,土地制度と生物多様性の関係を実証的に明らかにした.今回の実証分析は,オフセット制度導入が土地利用や生物多様性に与える影響を今後定量化して,望ましいオフセット制度を実証的に明らかにする上での重要な出発点になると考えられる.
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