2011 Fiscal Year Annual Research Report
救命率・社会復帰率予測に基づく救急医療体制と患者輸送システムの研究
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23656321
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
角 知憲 九州大学, 工学研究院, 教授 (90133090)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大枝 良直 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10253501)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 救急医療 / 救命率 / 社会復帰率 / 搬送時間 / ネステッド・ロジット・モデル |
Research Abstract |
初年度においては、これまでに収集されてこなかった救急医療における患者の到着時、発症前の状態、診断、医療処置と転帰の詳細データの収集・記録様式を決定するとともに、経常的救急医療活動を通して調査しデータ収集を図る計画であったところ、残念ながら具体的な調査には医師や看護チームの労力が不足して、十分な調査が行われていない。そのため、近年の医療技術の進歩に基づく治療効果を反映した救命率・社会復帰率の予測モデルを得るには至っていない。しかし、これまでに蓄積されたデータを医師団との情報交換を行いつつ、三次救急病院に直接搬送された患者のうち主として脳・心臓血管系の患者についてデータを解析するなかで次のような成果を得るにいたった。 1)発症から治療開始までの所要時間の長さが治療効果に与える効果は、決定的ではないが、有意な効果である。 2)発症から治療開始までの所要時間は、救急車の現場到着・収容・病院到着まで搬送時間と到着後治療開始までの検査・前処置所要時間に分けられ、後者の時間の長さが無視できないが、搬送時間と治療効果の関係は確認された。 3)一次、二次救急病院から三次救急病院に転送される患者についても、病院到着後治療開始までの検査・前処置所要時間の長さは直接三次救急病院に搬送された患者のそれと有意な差はない。 4)標準治療法が存在し病状に応じて治療方法が選ばれるので、両者を区別したモデルは作成できない。 5)明らかに軽症の患者については、他の重傷患者を優先するトリアージのような現象が存在する可能性がある。 6)このため、明らかに軽症であるか否かの判定を最初のステップとする多段階予測モデルを構成する必要がある。方法論として、(1)明らかな軽症か否か、(2)治療によって生存するか否か、(3)生存するとしたら早期に退院し社会復帰するか否か、を段階的に予測するネステッド・ロジット・モデルを作成することができる。 これらの知見は、日本救急医療学会の一部などで構想されている広域・拠点型救急システムの効果予測などに応用可能であるが、さらに近年の医療技術の急速な進歩を反映するとともに、社会の高齢化や輸送技術の進歩を考慮する必要がある。
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