2011 Fiscal Year Research-status Report
水資源消費に起因する環境負荷の影響評価への国や地域による相違の組み込みの新提案
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23656326
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
花木 啓祐 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00134015)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 水資源 / 気候変動 / 中国 / タイ / バングラデシュ |
Research Abstract |
中国華北部の水資源消費に対する経済的な価値の評価を行った。北京市の住民に対して(1)水道水を利用することに関する価値、(2)上流の水源に対して負荷を与えていることの損害を防ぐための支払い意志額、(3)下流の水質汚濁防止のための支払い意志額を仮想評価法(CVM)によって問うた。3つの方法で支払い意志額を尋ねた。第一は、これら3つの価値の総額を自由回答で答え、次いでその中で3つの内訳を問う方法である(配分モード)。第二は、3つの価値の1つだけ、あるいは2つ、更には3つに対する支払い意志額を問う方法である(上乗せモード)。更に、さまざまな順序で3つの価値を順々に尋ねる方法もとった(構成モード)。被験者は合計で2,200名であった。配分モードの場合、一ヶ月一世帯あたりの支払い意志額は、水利用33.6元、水資源14.0元(約180円、年間で2,160円に相当)、水質汚濁13.9元であった。 バングラデシュ・ダッカにおける水資源については、水利用にかかわるステイクホルダーを洗い出す作業を行った。その過程で、汚染によって水資源が利用不可能になっている場合が多く、従って水利用だけでなく汚濁排出源もステイクホルダーとして扱わなければならないことが明らかになった。 タイ南部ハジャイの水資源については、降雨強度がどのように将来変化するかを気候変動モデルの統計的ダウンスケーリングによって評価した。1981年から2000年までのハジャイの気象観測データを元にして大局的な気象状況と局地的な降水の関係を統計的に求め、次いでIPCCのSRESのA1シナリオに基づく2つの気候変動モデル(CGCM3とHadCM3)の1981年から2099年までの出力値に適用することによって局所的な降水量を再現した。HadCM3を利用した結果によると回帰年100年の強い降雨の強度は将来減少すること、などが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、中国華北部の水資源の経済価値の調査を先行して進めた。このテーマについては、一定程度の成果が得られたと判断している。バングラデシュについては、データの入手の問題などの制約がある中で検討を続けている。タイについては、局所的な気象データを得て、それを元にして気候変動モデルからのダウンスケーリングを進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、バングラデシュおよびタイの解析に力を注いでいく。これらの地域においては水資源に関するデータの入手が制約条件になりうる。23年度の検討で、入手可能なデータ、モデルについてある程度の見通しが得られたので、それらを勘案して研究を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
タイおよびバングラデシュについては、それぞれ現地調査が必要である。また、GISを用いた計算を24年度も必要になるので、そのための計算機関連の経費が必要である。
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