2011 Fiscal Year Research-status Report
収益用建築物に着目した事業継続性の観点からの首都東京の耐震性能分析
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23656343
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
衣笠 秀行 東京理科大学, 理工学部, 教授 (00224999)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 建築耐震設計 / 許容限界経済損失 / 収益用建築物 / JREIT / 経済活動の維持 / 都市の耐震性 |
Research Abstract |
初年度はJREIT所有の収益用建築物を対象として、経済学的および建築工学的アプローチによる耐震性能分析を行った。分析に用いたJREIT物件データは、現時点で公開されている約3000物件である。 経済活動の舞台を提供する収益用建築物の存在価値は、構造物への投資と収益のバランスによって定義されている。地震時の過大な修復費用の発生は、収益用建築物の経営破綻、ひいては、首都東京の経済活動の麻痺を引き起こす。最近、収益用建築物の価値をDCF法に基づき評価することがよく行われるようになった。DCF法はこの価値を供用期間中の収益を総和することによって計算するものである。 DCF法では建物の価値を、その建物が売却益も含む供用期間中に生む利益の総和として定義しており、建設費用をAとしたとき、これを投資と考え、「投資A<価値V」の関係が成り立てば、この建物は収益を生む、すなわち、経済的に存在価値のある建物と判断されることになる。 一方、所有期間中に地震が発生し修復費用などの経済損失が発生した場合、価値Vはその分損なわれることになり、もし、この結果、「投資A > 価値V-地震時経済損失」の状態になれば、この建物の経済的価値は消失することになる。 本年度は、この関係を用いて経済的価値消失に対する許容限界修復費用をJREITの約3000物件について算出を行った。許容限界修復費用 が小さい構造物は損傷に対して経済的価値を失いやすいものであり、構造力学的な観点ではなく、経済的観点から見た「損傷に弱い構造物」である。この許容限界修復費用を算出することは、経済活動を行う都市の耐震性を考える上で意義深いことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
JREIT所有の収益用建築物の情報公開が進んでおり、分析に必要は情報を容易に手に入れることが出来た。また、これらデータを使用した分析がほぼ問題なく順調に進行しており、初年度に計画していた成果が得られたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に算出したJREIT所有物件の許容限界修復費用を元に、次年度は各物件の建築情報や収益性に関する特徴と許容限界修復費用との関係を詳細に分析する。経済学の観点から見た耐震性の高い物件の特徴を明らかにすると同時に、これをもとに、経済学の観点から見た都市の耐震性について考察を行い、都市耐震の現状と、これからの耐震設計の有るべき姿について論じたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究自体は順調に進行したが、年度末の研究成果のまとめ作業に多少遅れが生じ、これのために予定していた消耗品の支出が「次年度使用額」として生じた。この分の支出を含めて次年度に問題なく研究費の使用を行う予定である。
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