2011 Fiscal Year Research-status Report
天空画像を用いた夜間照明浪費エネルギー量マップおよび光害頻度予測方法の開発
Project/Area Number |
23656351
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岩田 利枝 東海大学, 工学部, 教授 (80270627)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 大輔 ものつくり大学, 技能工芸学部, 講師 (10567978)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 光害 / 天空輝度 / 上方光束 / 雲 / 画像 |
Research Abstract |
本研究では夜間の天空輝度分布画像と雲の可視光反射率、雲底高さ、地理情報を用いて、各地域からの上方光束量を推定する方法を開発する。研究計画の基本的な流れは、(1)上方光束の放出地点(計算点)と被照点(測定点)の決定、 (2)測定点での天空輝度分布画像のとり込み、(3)被照点輝度、雲底高、雲の可視光反射率の算出・推定、(4)各放出地点の上方光束の推定、(5)上方光束分布マップから照明用浪費エネルギーマップを作成、(6)光害頻度予測図の作成からなる。23年度はこのうち(1)~(3)を中心に行った。上方光束の放出地点と輝度測定点の決定については 首都圏において、新宿、渋谷、大手町など上方光束放出地点を選択し、位置関係から測定すべき被照点として東海大学代々木校舎、皇居等を決定した。また夜間の天空輝度を測定するため、CCDカメラの低輝度測定(0.001~4 cd/m2)のセッティングとキャリブレーションを行った。また等距離射影魚眼レンズの入射角による減光補正を行い、魚眼レンズを用いた画像からの各放出地点における上方光束を算出するプログラムを作成した。このプログラムでは上方光束放出地点を4点、輝度測定点を4点とした。測定点(東海大学代々木校舎、皇居)において、曇天日の天空画像の取得を行った。首都圏での節電状態が継続していたので、駅周辺における点灯率の実態の調査を実施した。この結果、乗降客15万人以上のA級駅で夏季は50%の点灯率で、秋以降もほとんど変わらず節電状況が継続していた。夜間の雲量・雲底高の測定のため、東海大学代々木校舎屋上において、購入した雲量・雲高計(英弘精機CIR4)の設置と予備測定を行った。雲量・雲高計は雲底高度の出力範囲は300~8,000mであるが、中心から30度ずつ開いたセンサーで赤外線を拾うため設置場所周囲の妨害物の影響を除くためのキャリブレーションを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
測定点の設定、天空画像取得のためCCDカメラのキャリブレーション、プログラムの開発、雲量・雲高計の設置など上方光束を測定するための準備は順調に進んでいる。問題は、東日本大震災が原因となった電力不足による節電状態が長引いているため、取得した天空画像データが「通常」とは異なる点にある。さらに、東京電力管内だけではなく23年4月に代替の測定を予定した関西電力管内でも節電状態となった。研究計画にはなかったが、節電状況を把握するため駅周辺で屋外照明について点灯率調査を行い、その結果点灯率は平均で50%程度にとどまっていた。このように23年春から現在までに取得した天空輝度データは、通常状態の光害のデータとは言い難い可能性が高い。この点について、24年度も電力料金の値上げなど東日本大震災以前の状態に回復しないことが見込まれ、目的の一つであった照明用浪費エネルギーマップとそれに基づく光害頻度予測図は「2012年当時」という但し書きをつけざるをえない。本研究の成果として掲げていた「照明用エネルギー浪費量マップ、光害頻度予測図から、夜空の明るさが上昇している実態が地域別に定量的に明らかになり、照明用エネルギーの無駄の削減および光害の削減に貢献できる」という社会的インパクトが弱くなってしまった。しかし、逆に震災後の節電状況を把握できるデータが得られたことは有意義だったとも考えられる。またこのまま節電が続いても、本研究の目的の一つである天空画像を用いた上方光束予測方法の開発は達成できるので、この方法を用いて夜間照明浪費エネルギー量マップの作成と光害頻度予測は研究期間以降に行うことも可能である。将来の節電リバウンドに備える上で有効である。また、雲量・雲高計が発注から納品までに時間がかかったため、23年度前半は雲底高および反射率の推定は従来の雲の高さが異なる複数枚の画像を用いる方法を採用した。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度はさらに天空輝度分布画像データの取得を行い、各放出地点の光度・光束発散度の算出・上方光束を推定する。それらから夜間照明浪費エネルギー量マップの作成と光害頻度予測へと発展させる予定である。まずデータ精度の検証として、(1)画像から推定した雲底高と雲量・雲高計による測定値の比較、(2)夜空から自然にくる光(大気光、星野光)と月からの光の影響の除去、を行う。(1)については輝度画像から雲底高を算出する。また、可視域に対するStephensの研究に基づく計算方法により、総雲水量を用いて雲の反射率を算出する。これらを雲量・雲高計の測定で得られたデータと比較し、画像からの検出が可能な範囲を明らかにする。(2)については測定に対する妨害光の量と地上からの上方光束量を比較し、その割合からデータ収集の精度基準を作成し、使用可能データの判別を行う。精度検証を行った天空輝度分布画像データ、各放出点の光度および光束発散度を求め、地理情報から面積を推定して上方光束を求める。上方光束放出点の光源の発光効率を推定して上方へのエネルギー量としてマップを作成する。近年屋外照明のLED化が進み、発光効率の精度のよい推定が困難なので、試行段階として各点の上方へのエネルギー量を地図上に布置する程度のものを目指す。夜間の雲データを用いて光害頻度予測図の作成する予定であるが、「現在までの達成度」に述べたように、節電状態が続く中、光害頻度予測図は「2012年当時」という但し書きが必要になると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
より多くのデータを効率よく取得するために計測用パソコンと取り込んだ画像データが多いので解析用パソコンおよび記録メディアを購入する。また、国際学会発表のための外国旅費を計上している。
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Research Products
(1 results)