2011 Fiscal Year Research-status Report
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23656365
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
金 淳植 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 博士研究員 (30464598)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | USA / 都市再生 / 地域再生 / 税額控除 / 社会的金融 / コミュミティ開発 / CDFI / 地域金融 |
Research Abstract |
当該年度においては、アメリカの地域再生政策をサポートする租税制度を主たる研究課題として取り入れ、その成果を「コミュニティ開発の支援制度としての税額控除―マーケットを誘引する新次元の制度設計とCEIの挑戦―」、『季刊経済研究』第33巻第3・4号として発表することができた。アメリカのコミュニティ開発については、いくつかの論文や研究成果が発表されているが、その財政・金融的なサポートについてはほとんど触れられてないままシステムの骨組みやプロセスの追及についての研究がほとんどであった。当研究においての研究成果は、日本で初めて、コミュニティ・地域再生における租税・金融的な支援制度の枠組み・歴史・地理的分布・リスク要因・控除額売買による新市場開拓などの内容を明らからにし、その具体的な事例として、アメリカの代表的なCDFIが実施している税額控除事業の展開過程を分析した。 これは研究目的である、地域再生に活用できるリソースに地域金融があることを着目し、公共の財源・資源に依存せず、拡大した公共の意味において展開されている地域金融の多様な手法を取り入れた地域再生の全体像を明らかにすることのコアーな部分を達成したことになる。また、研究計画にあるアメリカの自立型都市再生に関する事例研究の一部である、NPOを中心として中心市街地の衰退をとどめ、独自の資金供給のチャンネルを作り上げているケースについて、CEIを例にとって解明できたことと位置付ける。 この成果は時期的に、NPOへの寄付税制制度が拡大した2011年の日本国内の事情に照らし、その制度の限界と今後の発展方向について、政策的な含意を導き出す研究成果として、より地域・コミュニティに着目した租税・金融制度を確立するための研究に拡大できる土台を提供したことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究は、地域再生に活用できるリソースに地域金融があることを着目し、公共の財源・資源に依存せず、拡大した公共の意味において展開されている地域金融の多様な手法を取り入れた地域再生の全体像を明らかにすることに主たる目的がある。また、地域主体の地域再生に取り入れられている金融手法を明らかにすることによって、日本の経済社会に適合した地域再生と持続可能性を醸成するための地域金融の研究へ進展する土台を提供することも目的としている。 特に地域主体の「新しい発展モデル」を見出すことを構想していたため、その先進的な事例の豊富なアメリカの地域政策の優位性と限界を明らかにしようとした。現在まで、地域再生ファンドへの投資と税額控除の配分がセットになっているNew Market Tax-credit制度の意義と展開についての研究成果を、「コミュニティ開発の支援制度としての税額控除―マーケットを誘引する新次元の制度設計とCEIの挑戦―」、『季刊経済研究』第33巻第3・4号として発表することができ、もっとも主要な目的を達成できた。今後は疲弊地域の具体的な再生政策とEUの都市政策の展開について研究を進めることを残している。 なお前年度は韓国の疲弊地域における社会的企業・金融の調査を数回実施し、豊富なデータや情報を制することができた。これは日本と比較に大きく役立つ内容となり、翌年度中に成果発表ができることと予定している。 以上の研究状況に基づいて、現在までの研究はやや順調に進めてきたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はEUの新しい構造基金形成の一環として、地域発展のための金融システムの構築とそこへの地域自立型金融コントロール力を構築するための地域再生投資を分析する。地域金融形成をコアーにしている地域再生の運用プログラム実行地域のなか、財政危機に苦しむEU諸国の中から可能な2か国を選び出し、国家財政の危機の中でも、地域金融の形成を通じて自立した力を持つ地域再生戦略がどう動いていくのかを研究していく。実施主体のEDBやRGの協力を得て、地域再生の効果が明らかになりつつあると評価される地域において直接、ホールディング・ファンドの構築、中間団体の選定、対象零細企業、貧困層への支援サービス、福祉サービスの提供実態などを把握して、その全体像を描く。このための2週間ほどの現地調査を実施する。 また、23年度に完全に実施できなかったアメリカの都市再生政策と地域金融の違うモデル=州政府と自治体がリーダーシップをとる広域的都市再生政策を分析していく。23年度に実施できなかったフィールドワーク地域・ボストン・コンコードなどに加え、地域の非営利金融機関がリーダーシップを取り、広域的な環境再生・地域の経済再生を同時に成功させた西シアトルの事例も調査していく。このための2週間ほどの現地調査を1回ないし2回実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額の111,283円は、当該年度に実施できなかったアメリカの西シアトルにおける地域の非営利金融機関がリーダーシップを取り、広域的な環境再生・地域の経済再生の現地調査に費用として充当する。単独の調査としては調査費用として十分賄えない金額であるため、シカゴ、デトロイトなどの他の現地調査の時に追加スケジュールとして実施し、現地での移動交通費や宿泊日として充当し用途に合致できるように調整ツする。 翌年度の研究費については、中心であるヨーロッパでの現地調査をメインにし、10日ないし2週間程度の現地調査を実施、また今年度に実施できなかったアメリカの中西部地域の追加調査の実施費用として回す。文献の追加調査などが必要となるため、都市再生・地域再生の関連図書の備品購入をする予定である。その他、現地での調査協力者などについて、研究費の一部を謝金として支出する。 なお、翌年度中に成果発表のための国際会議での報告を考えていて、その具体計画が決められ次第、報告旅費として一部を充当する予定である。
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Research Products
(2 results)