2011 Fiscal Year Research-status Report
北関東の町並みの建築的構成とその展開過程に関する研究
Project/Area Number |
23656373
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤川 昌樹 筑波大学, システム情報系, 教授 (90228974)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 江戸型町家 / 農家同源型町家 / 簡易構造の雑舎 / 常陸太田 / 東北地方太平洋沖地震 |
Research Abstract |
本研究の目的は、北関東の伝統的町並みの二つの特色(α多様なタイプの町家から構成されている、β現況では伝統的町家の残存率は高くない)を説明する以下の仮説を検証することにある。すなわち、i)北関東の町並みはおよそ戦前期頃まで、A江戸型町家、B農家同源型町家、C簡易構造の雑舎の三種の建築により構成されており、Aは定型化が進んでいたが、B・Cには様々なヴァリエーションがあって定型を獲得する前に戦後を迎えた。ii)町並みの中に、Cが少なからぬ比率で存在し、これらの建て替えが戦後急速に進んだ。以上の事情があったため、上記α・βの町並みの特色が生じたのではないかとの仮説である。本研究はこの仮説を検証するため、遺構の現存確認・実測調査をもととした分析作業を行うものである。 今年度は、(1)研究史の中でのこれまでの北関東の町屋の位置付けを再確認した上で、(2)常陸太田市鯨ヶ丘地区において上記A・B・Cの残存状況を確認し、(3)Aタイプ2棟、Cタイプ2棟の実測調査を実施し、図面作成を行った。また、(4)2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震による地震が、これらの町屋にどのような影響を与えたかを、茨城県内の伝統的町並み(太田・真壁・結城・古河・下館・土浦・石岡など)において目視調査により検討した。 この結果、(1)Aタイプの町屋にもCタイプの建築を一部に組み込んだものがあること、(2)Cタイプの町屋でも、内部意匠には手の込んだものが現存すること、(3)昨年の大地震ではAタイプの町屋の被害が大きい一方で、(意外なことに)Cタイプの町屋の被害が軽微であり、地震に対してCが脆弱とは必ずしも言い切れないこと、などが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、(1)調査・研究史の整理・データベース化、(2)簡易構造雑舎の実測調査1:常陸太田市鯨ヶ丘地区に現存する簡易構造の雑舎のうち、外観調査から10軒程度を調査対象として選定する、(3)簡易構造雑舎の類型的把握:(1)(2)の作業から、簡易構造雑舎の建築には、どのような種類があり、それぞれいかなる建築的特徴があるかを、「江戸型町家」「農家同源型町家」と対比させつつ把握することが目的であった。研究史上の位置付けを確認したうえで、常陸太田市での所在確認を済ませ、4棟の実測調査まで実施できたため、おおむね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きC簡易構造雑舎の実測調査を実施し、どのようなタイプのものが存在したのかについての知見を充実させていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度の研究は全体としておおむね順調に進展したものの、東日本大震災の影響が著しかった桜川市真壁町での町家所在確認調査については十分に実施することができなかった。 そこで今年度は、繰越額と今年度予算と合わせて、茨城県桜川市真壁地区に残されている「家屋台帳」(明治35年)を用い、簡易構造雑舎と推定される建築が町並みの中にどの程度の比率を占めていたかを把握すると共に、現存状況を現地調査により明らかにする。また、常陸太田市でも補足的な実測調査を実施する。このため、旅費や調査補助員の人件費が多くを占めることになると思われる。
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