2011 Fiscal Year Research-status Report
『西洋家作ひながた』における建築用語の翻訳とそこに見られる西欧建築概念の受容
Project/Area Number |
23656375
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
丹羽 和彦 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00228264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渕上 貴由樹 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00530172)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 建築用語 / 近代化 / 翻訳 / 西洋家作ひながた |
Research Abstract |
西欧近代の建築用語のわが国における翻訳実態を精査し、翻訳語を一つの「分析指標」とみることにより西欧建築文化の移入過程の特徴ならびにその受容の特質を明らかにするものであり、その中でも明治5年という突出して早い時期に刊行された翻訳書である村田文夫、山田貢一郎訳『西洋家作ひながた』(原著C.Bruce.Allen, Cottage Building (副題省略))を対象とするものである。 本年度は、おもに『西洋家作ひながた』に記載されている建築用語の抽出、および翻訳方法の検討をおこなった。結果、記載中の訳語については、西欧圏にその概念があるとみなされる建築用語に対して、現在の意味から比較してやや特異な訳語があてられている事例を確認できた。たとえば計画的分野に相当する語句living-roomに対応する訳語としては「住居部屋(すまいべや)」があてられており、「居間」という語句は翻訳文中にはいっさい確認できなかった。この他にも建築構造、材料、設備等の建築用語においても同様な形跡が確認でき、現在これらの訳語を整理・分類して原文との比較作業を行っている。 また、翻訳方法に関しては、和語、漢語からの建築用語の翻訳方法の検証を行うための語句整理を行った。その結果、訳文中の漢字の語句に対して音読みと訓読み併記のかたちで左右にルビが振られている事例を約170確認した。またルビの活用の他に訳注をつけて説明を付加している事例を約110確認できた。このようにひとつの語句に対する翻訳方法に違いがみられることから、日本社会の建築用語の知識の実像や訳者の興味の範囲に注目しながら検証をおこなっていく。 次年度は抽出した建築用語を整理・分類したうえで原文の建築用語との比較を行う。そして『西洋家作ひながた』刊行当時とその後の英和辞書等に着目し、西欧近代起源の建築用語の移入過程について明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画内容については、1)訳者の経歴を含む翻訳環境の再検証、2)『西洋家作ひながた』の書誌学的検討の精緻化、3)翻訳方法の検討、の3項目をあげた。1)と2)の項目に関しては、おもに以下の既往研究調査および内容の整理をおこないつつ現在検討作業を継続している。(丹羽和彦、「村田文夫と『西洋家作ひながた』について」、日本建築学会大会学術講演梗概集F-2,1999年, pp.339-340. 藤田治彦、「明治5年刊「西洋家作雛形」の建築用語」、待兼山論叢33(美学), pp.1-24, 1999年.)3)に関しては文献および史料等の収集を終え、『西洋家作ひながた』掲載中の建築用語の抽出、訳注およびルビの確認等の作業を完了した。現在、同書から抽出した訳語と原著"Cottage Building"掲載中の建築用語との比較作業を行っている段階である。具体的な研究成果の発表にまでは至っていないものの、全体としては次年度の成果のまとめへ向けておおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
原文との建築用語の比較作業および辞書等による検証作業は膨大であることから、一部学生(大学院生)による助力を検討中である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大きくは以下の項目で研究費使用を計画している・ 翻訳作業の精密化(関連辞書、文献の購入)・学会研究発表関連経費および論文発表投稿費
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