2013 Fiscal Year Annual Research Report
日本における岩盤掘削技法と石造建築文化に関する調査研究
Project/Area Number |
23656377
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Research Institution | Cyber University |
Principal Investigator |
柏木 裕之 サイバー大学, 国際文化学部, 教授 (60277762)
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Keywords | 石造技術 / 採石 / 石工 / 石蔵 / 大谷石 / 石垣 |
Research Abstract |
平成25年度は凝灰岩系の採石場として、大谷(栃木県宇都宮市)、笏谷石(福井県福井市)、福光石(島根県大田市)、大串石(香川県さぬき市)、豊島石(香川県小豆島町)、鋸山(千葉県富津市)を訪ね、資料の収集と建造物における石材の利用方法を調査した。特に古民家における石材の利用方法は、木材に比べて研究が遅れており、今後の重要な課題であることが認識された。また花崗岩系の採石場として庵治(香川県高松市)、犬島(岡山県)、真鶴(静岡県)を訪ね、石材道具を中心に資料収集を進めた。 宇都宮市の大谷地区では地元のNPO大谷石研究会と共同で、西根地区および上田原地区の悉皆調査を実施した。いずれも大谷石の石蔵が面的に集積し、国内では稀有な石の町並みを作り出している。一方で、生活スタイルが変化し、石蔵の維持が困難になっている状況も明らかとなった。西根地区では住民や行政を交え、景観を巡る意見交換会を実施し、貴重な文化遺産を維持するため、引き続き検討していくことが確認された。また石蔵が集積する地区が他にも見つかり、今後の本格的な調査に向けて、基礎的な資料収集を実施した。 城郭の石垣に用いられた石材が花崗岩である。平成25年度は文化財石垣保存技術協議会が実施する石垣研修に参加し、石材加工や組積技術を学んだ。また伝統的なやり方で石彫工具を作成し、そのポイントを理解、検討した。合わせて石工や採石業者から聞き取りを行い、石垣修復の現状を調査した。 日本の石材業は安価な海外産にますます押され、採石場の閉山が相次いでいる。職人の高齢化、後継者不足も深刻で、石蔵などの保存、修復を担う人材が不足している。近年石を前面に出したまちづくり、地域振興が盛んにみられるが、職人の不足は今後大きな問題になると思われ、石蔵の活用、再生を後押しする歴史的、技術的な研究が進むことが期待される。
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Research Products
(1 results)