2011 Fiscal Year Research-status Report
都市組織の重層的変容に基くパリの近現代都市基盤インフラ形成に関するGIS援用研究
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23656378
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
松本 裕 大阪産業大学, 工学部, 准教授 (20268246)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 都市組織 / 都市器官 / 都市再開発 / パリ / オスマン / 土地収用 / 土地区画整理 / 地籍図 |
Research Abstract |
本研究の目的は、歴史都市パリにおいて、重要な都市基盤インフラを成している「都市組織(tissu urbain)」の重層過程を、GISを援用しながら図化し、その変遷の詳細を分析することである。 研究初年度(H23/2011)は、旧市壁(シャルル5世の城壁とルイ13世の城壁)の界隈を対象に、パリ市中心地区から旧郊外に至る連続都市組織図をGISにて図化した。当該年度に作業を行った地域は、ボンヌ・ヌーヴェル地区+マイユ地区ならびにパリ市歴史中心地区レ・アール地区の2地区と旧フォブール・ポワソニエール地区(現ポルト・サン=ドニ地区+フォブール・モンマルトル地区)の南側グラン・ブルヴァール周辺区画である。かかる地域の都市組織図を現代版にまで更新すべく、現地踏査と、一次資料の収集を実施した。特に、レ・アール地区においては、1991年版都市組織図に記された状況を一変させる大規模再開発が進行しており、その解体現場の状況を調査した。レ・アール地区の今後の変遷図作成は進捗状況に応じ次年度以降の作業目標に付加する計画である。その他の地域では、1991年度版以降に特筆すべき変化は見られなかった。なお、こうした一連の近・現代都市再開発関連資料は、パリ行政資料館、パリ市古文書館、パリ市歴史図書館にて収集した。 これらのデータに基づき、当該年度は、パリ市の歴史中心地区から旧都市境界域までに及ぶパリ市発展の基本的な拡張を、都市組織図(18世紀末から現在まで一次資料に基づく8つの時代断面)のレベルで比較可能な状態とした。今後は、これらの都市組織図を比較して、変化したの箇所を抽出し、その詳細について、建築類型の観点からも分析を行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度計画では、目標として「パリ市中心地区から旧フォブール(郊外)に至る連続都市組織図のGISを用いた作成・データ構築」を掲げ、具体的な実施計画として次の3箇所を対象として設定し作業を行った。[1]ボンヌ・ヌーヴェル地区+マイユ地区[2]パリ市歴史中心地区レ・アール地区[3]旧フォブール・ポワソニエール地区(現ポルト・サン=ドニ地区+フォブール・モンマルトル地区) その結果、[1]に関しては、収集された一次資料に基づき、都市組織図の作成がほぼ完了した。また、[2]についても、既存図面のGIS化は完了したが、大規模な再開発が開始された直後であったため、都市組織図の現状状態の確定は不可能であり、今後の作業の進捗状況に照らし作業を継続する必要が生じた。[3]に関しては、フェルミエ・ジェネロの城壁に至る範囲をすべて図化するには作業時間が不足することが予見されたため、中心部からの連続図面となるように、ルイ13世跡地のグラン・ブルヴァール界隈の都市組織図作成を優先的に行った。次年度以降も、[3]地域については、都市組織図化を継続していく。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に記した通り、残る2年間を次の作業へとあてる計画である。2012(平成24)年度<テーマ>:〈2〉オスマンのパリ大改造計画による都市組織の大規模再編の詳細初年度(2011/H23)作成予定の連続都市組織図に示された研究対象区域において、都市組織の大規模再編をもたらし、その後の近現代都市再開発の基盤を形成したオスマンのパリ大改造計画に関して以下の2点に分けて検証する:[1]オスマン在任中(1853-1870)に実施された開設道路、[2]「ポスト・オスマン」期に継続実施された開設道路 パリの近代都市再開発のうち、当申請研究対象地区におけるナポレオン3世とセーヌ県知事オスマンによる計画道路開設事業に伴う都市組織の変遷を、その前後の都市組織図の比較から図示化し、オスマン在任中に遂行された事業[1]とオスマン失脚後に継承された「ポスト・オスマン」期実施事業[2]を分析する。2013(平成25)年度<テーマ>:〈3〉重層的に構築されてきた都市組織の都市基盤インフラとしての近現代都市再開発への関与。次の3つの具体的場所における都市組織の変遷と近現代都市再開発計画との関係を分析する:[1] サン=ドニ門周辺再開発コンクール(1943実施)、[2]モントルグイユ歩行者専用区域の整備計画(1989-94以降現在に至る)、[3]レ・アール地区での2度の再開発計画(1963年旧市場解体以降現在に至る)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(2012/H24)の研究実施計画に鑑み、経費の主たる使用目的は次のとおりである:・「外国旅費」調査対象であるフランス・パリへの現地調査費用・「謝金等」フランス語の関連文献や一次資料(手書きなど)の解読・論文作成補助・「その他」建築・都市関連文献の購入、運搬、データ保管等にかかわる諸費用
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Research Products
(2 results)